堀江翔太、W杯に「全部、懸けたい」 日本ラグビーの頼れる男が復帰

斉藤健仁

「チーム力を上げるのは個人能力やと思います」

FWでありながらBKのような高いスキルを持つ堀江翔太 【築田純】

 1月の時点では「5月か6月にスーパーラグビーの試合に出られれば」と言っていたが、4月での合流は「まったく気にしていない」と言う通りケガの回復具合が順調であることを示していた。堀江は「運動量にこだわりたいし、自分の仕事が明確になることをやりたい。セットプレーを安定させて、サポートもいくし、タックルもいくし、すべてに関して一生懸命、目立てるようにしたい」と自身の開幕戦に意気込んでいた。

 堀江の思いの根底にはやはり、チーム力を上げるためには、まず個人の能力や経験値が土台になるという思いがある。「4年前と比べて個人個人としてはレベルが上がっていると思います。FB山中(亮平)は去年とレベルが違って、調子いいですし。一人ひとりの能力はサンウルブズの経験で伸びていっている。チーム力を上げるのは個人能力やと思います」

 ただサンウルブズ除外の決定に関しては、こう寂しそうに述べた。「僕が言ってもどうなるものじゃない。僕とフミさん(田中史朗)はスーパーラグビーに挑戦するのはすごく大変だった。その経験ができなくなるのは、若い子たち、ユースの選手にとってはマイナスの部分だと思う。その分、どこかで補えるような動きがあればいい。それがなければ若い子たちは海外に行っていろいろな経験をしてほしいけど、学生時代は経験できない部分、状況もあると思うので、日本ラグビー協会が作ってくれればいいと思います」

劣勢の試合でも積極的にプレー

スクラム、ラインアウトを安定させるために堀江の役割は大きい 【斉藤健仁】

 堀江の6年目のスーパーラグビーは、0対33という劣勢の中、後半最初から投入された。「(チーム合流から)1週間も経っていないので必死です」と言いつつ、ディフェンスでは中盤で味方に積極的に指示を出し、アタックではWTBのように両翼のスペースのチャンスをうかがい、「日本代表ではしない。裏にスペースが見えたので」となんでもできる堀江らしくBKのようにグラバーキックも見せた。

「すり合わせが少なかった」というスクラムでも、前半の劣勢からどうにか後半、修正していた。「僕は(日本代表のスクラムコーチである長谷川)慎さんの考えでやってきているので、なるべく合わせようとしたが、最後の方は、とりあえず自分の持っているものを出さないといけないと、ロックやいろいろな選手に指示を出してスクラムを組んでいました」(堀江)

 初戦は大敗してしまったが、堀江はサンウルブズのオーストラリア遠征メンバーにも当然、選出された。「どれだけコミュニケーションを取って動けるかが大事」と言うように、経験豊富な選手としてリーダー的な存在としてチームを引っ張っていくはずだ。

W杯日本代表入りへ「ハングリーに愚直に」

3度目のワールドカップに向け「日本代表としての集大成にしたい」と意気込んでいる 【斉藤健仁】

 以前から「40歳まで選手をやりたい」と公言している堀江だが、今はワールドカップを目標に、目の前の試合に集中している。「まだ日本代表のスコッドが発表されていないので、ハングリーに愚直に、(ワールドカップのメンバー入りを)取りにいきたい。常にワールドカップで戦うロシア、アイルランド、サモア、スコットランド相手を想定して練習に取り組んでいます」

 3度目のワールドカップを控え、堀江は「日本代表としての集大成にしたい」「全部、懸けたい」と語気を強める。どことなく力が抜けた自然体が魅力の堀江だが、ファンの期待、チームの思い、自身の思い、そして家族の思いも全部背負って開幕戦のピッチに立つはずだ。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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