日本代表FWの要に…充実の坂手淳史 「切磋琢磨してワールドカップに出たい」

斉藤健仁

FWの要、2番を担う坂手淳史

昨秋から日本代表、サンウルブズと9試合連続で出場している坂手淳史 【斉藤健仁】

 ラグビーワールドカップまで200日を切った。本番を見据えると背番号「2」、HO(フッカー)というポジションはスクラム、ラインアウトといったFWのセットプレーの要であり、SH(スクラムハーフ)、SO(スタンドオフ)と同様に替えの利かない重要なポジションである。

 特に日本代表はワールドカップの予選プールでロシア代表、アイルランド代表、スコットランド代表とセットプレーに強みのある欧州勢と3試合することを鑑みると、現在、右足甲骨折のリハビリに励む不動のHO堀江翔太(パナソニック)だけでなく、もう一人、二人と選手層を厚くしたい。

 昨秋の日本代表戦から、今春のサンウルブズの試合まで9試合すべてに出場を続けて、日に日に存在感を増し、2018年度のトップリーグでも初めて「ベスト15」に輝いた25歳の若きHOがいる。それが日本代表13キャップの坂手淳史(パナソニック)だ。

 日本代表のジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)も、サンウルブズの活躍ぶりに、珍しくPR山下裕史らと合わせて「いいパフォーマンスをしている」と坂手を名指しして褒めたほどだ。

帝京大時代に強烈なタックルで頭角を現す

帝京大時代には強烈なタックルで7連覇に貢献した 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 3月16日のレッズ戦でも先発出場した坂手は、身長180cm、体重104kgと世界の強豪チームと比べると決して大きな体躯ではないが、攻守にわたってフィールドプレーでは前に出続けた。試合は惜しくも31対34で逆転負けを喫してしまい「後半、セットプレーやペナルティーで相手を自陣に入れて生き返らせてしまった」と反省しつつも、「自分の中でフィジカルではアピールできた」と胸を張った。

 坂手といえば、帝京大時代は4年時にキャプテンを務めて7連覇に貢献した。ただ彼を全国区にしたのは、やはり帝京大学1年時の日本選手権でのパナソニック戦だ。前半途中から出場すると、トップリーグ勢にビッグタックルを繰り返し、そのままジュニア・ジャパンやU20日本代表入りを果たし、大学2年時には日本代表にも招集された逸材だ。

中学にバレー部がなく、ラグビー部へ

大学時代から国際経験を積み、日本代表の常連となった 【斉藤健仁】

 坂手はもともと、バレーボール一家に生まれたが、中学にバレー部がなく、帝京大時代のチームメイトになるWTB南藤辰馬(近鉄)の誘いでラグビー部に入った。FB藤田慶和、CTB金田瑛司とパナソニックの同期とは京都選抜で一緒だったという。そして伏見工業(現・京都工学院)ではなく、「歴史を変えよう」と湯浅泰正監督に誘われ、京都成章に進学。花園に2度出場を果たした。タックル精度の高さは、ディフェンスに定評のある京都成章出身の選手ならではと言えよう。

 大学卒業前にクルセイダーズアカデミーへの留学を経て2016年からトップリーグのパナソニック入りし、大学や代表の先輩であるHO堀江翔太らと切磋琢磨し研鑽を積んできた。アジア勢との戦いに出場しつつ、2017年にスーパーラグビーに5試合、2018年も5試合と徐々に国際経験を積んできた。

 しかし、昨年6月のテストマッチシリーズはHO堀江、そして2歳上の庭井祐輔(キヤノン)の後塵を拝し出場できなかった。ただ昨秋はHO堀江がケガの影響で参加できなかったこともあり、坂手にチャンスがやってくる。昨年10月の世界選抜戦では、坂手は後半から出場を果たし、ジョセフHCの信頼を勝ち得て、続くニュージーランド代表、イングランド代表、ロシア代表戦で先発にまわった。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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