天才フィエールマン春盾も最少キャリアV 秋・凱旋門賞実現へ課題は体質強化

スポーツナビ

「フランスの馬場も料理も好きだと思いますよ(笑)」

レース後、健闘を称えあったルメール(右)と戸崎は馬上でがっちり握手 【スポーツナビ】

 グローリーヴェイズは、メジロ牧場をルーツとするレイクヴィラファームの生産馬で、曾祖母はあのJRA史上初の三冠牝馬メジロラモーヌ。その曾祖母とメジロライアンの間に生まれたのが祖母メジロルバートであり、母系にはメジロ伝統の血が脈々と受け継がれていた。そして、メジロ伝統の血といえば、長距離に強いステイヤー血統であること。平成最後の天皇賞・春でそんなドラマが待っていたか、と僕の血も高ぶった。馬券は持っていなかったけど。

 追われる者よりも追う立場の方が強い、というのは競馬も同じことだ。末脚の勢いは外から強襲してきたグローリーヴェイズに分があるように見えた。しかし、フィエールマンは抜かせなかった。逆に、ゴール寸前にグイッと引き離してリードを広げたあたり、フィエールマンの底知れなさとともに、大きな可能性を感じさせたのではないか。

JRA年間プロモーションキャラクターを務める葵わかなさんも「大興奮でした!」というレースだった 【スポーツナビ】

 その可能性というのはずばり、海外だ。ルメールは言う。

「どこまで行けるかは、まだ分かりません。でも、レースをするごとに上手になっています。200メートルでも2400メートルでも大丈夫だと思いますし、スタミナもあります。そして能力が高いです」

 また、先日報道されていたように、フィエールマンはフランスの凱旋門賞に1次登録を済ませたばかり。出走が決定したわけではないが、「春の大目標である天皇賞を勝ったことで、秋の選択肢は凱旋門賞を含めて広がったと思います」と手塚調教師。アーモンドアイとの挑戦が幻になったルメールも「フランスは合っていると思います。お母さんのリュヌドールはフランス馬だし、フィエールマンはフランスの馬場も料理も好きだと思いますよ(笑)」と冗談交じりに話した後、「残念ながらアーモンドアイは出走をやめてしまったけど、今年も日本馬でぜひ凱旋門賞に行きたいです」と、気持ちを新たに凱旋門賞挑戦へ思いを描いていた。

「体力がつけば、この馬はもう1ランク上に行ける」

秋の凱旋門賞挑戦の実現へ、体質強化が大きな課題となる 【スポーツナビ】

 ただ、その凱旋門賞挑戦を単なる夢ではなく、現実のものとするためにも越えなければいけない壁は高い。その最大となるのが体質強化だ。菊花賞に続き、この天皇賞・春も史上最少キャリアで優勝し、その言葉の響きは“天才”を彩るにふさわしいものだが、陣営としては決して喜ばしいことではない。同馬を所有する有限会社サンデーレーシングの吉田俊介代表が「レースごとの消耗が激しくて、すぐそこのレースを目標にできるタイプではない。本当だったら菊花賞も前哨戦を使いたかったんです」と、苦しい胸のうちを明かしたように、そのあふれる才能にフィジカルの強さが追いついていないのだ。手塚調教師が語った。

「凱旋門賞への挑戦は楽ではありません。体がしっかりしてきたとはいえ、環境への対応がまだ未熟。精神面についてくる体力がつけば、この馬はもう1ランク上に行けると思います。凱旋門賞までの半年間で成長があれば」

 半年というのは長いようで短い。だが一方で、早熟タイプではないフィエールマンのような馬が充実期を迎えるのも、ちょうどこの時期だ。平成最後のJRA・GI馬が令和の扉を開けるがごとく、もう1ランク上への成長を遂げることを今は期待して待ちたい。

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

2/2ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント