連載:ファインダー越しに見たフィギュアスケートの世界

ファインダー越しに見た【宇野昌磨】撮影意欲を湧かせる世界トップの滑り

和田八束
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 私が年間で撮影した数十万枚の写真を見るなかで、この選手はこのポーズがカッコいい、この表情が絵になるということが見えてきました。第5回は「2018 GPファイナル」から宇野昌磨選手の写真を5枚厳選。目の前の試合に、この一瞬の演技にすべてを懸ける、彼の熱いハートが写真から伝わってきます。

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ギャップが多くのファンを惹きつける

【写真(1)】2018 GPファイナル 男子 【(C)Yazuka WADA / JapanSports】

 宇野選手とはよく、試合会場への行き帰りのバスで一緒になるのですが、よく寝ています(笑)。宇野選手は、羽生選手とともに2大看板として、しばらく日本のフィギュア界をリードしてきました。羽生選手が今シーズン途中で怪我をしたこともあり、宇野選手はグランプリファイナルやその後に続く全日本も含めて、日本の男子をけん引していかなければという気持ちもあるのでしょう。本人は責任感のようなものを普段から表には出しませんが、演技で出しているなと思います。その反面、記者会見などでは外国の選手も含めて、宇野選手のことをすごく慕っている選手が多くて、誰からも好かれるキャラクターの持ち主なんだろうなと見ていて思います。でも、演技が始まると闘志をむき出しにしていく。【写真(1)】そのギャップを見ると、より一層、宇野選手の世界に引き込まれてしまいます。グランプリファイナルを見ていると、相当気合が入っていたように思いました。優勝はできませんでしたが、世界的に見ると、すごく層が厚い女子と比べて男子は劣っているという周りの声に、なんとか一矢報いたかったのかなという気持ちが演技から伝わってきました。

カメラの性能の上をいく滑り

【写真(2)】2018 GPファイナル 男子 【(C)Yazuka WADA / JapanSports】

 先を読むにしても1日後か、1時間後か、1秒後かいろいろとありますが、フィギュアスケートの世界では、1000分の1秒単位での先読みが求められます。その1000分の1秒のタイミングの測り方は慣れるしかありません。カメラで秒間10コマの写真が撮れたとしても、たかだか10分の1秒。ただ連写だけしていても、良い写真が撮れるわけではないのがフィギュアスケートの撮影の難しいところです。その点で、宇野選手はスケーティングがとても速い、加えて、流れのなかで表現をしていく選手に思えるので、カッコいい一瞬を切り取ることがとても難しい選手です。【写真(2)】は本当は連写で撮影したすべての写真をお見せしたいところですが、フィニッシュでポーズを決めている場面でも、顔の向きや指先、ひじの角度、足の向きなどが微妙に違うんです。映像で見ていると止まっているように見えるんだけども、わずか1、2秒の短い時間での繊細な表現を追求している宇野選手に驚かされます。この写真は、そのわずか1、2秒のなかで、指先の表現までビシッとキマッた一番カッコいい瞬間を、同時に、「やり遂げた」という宇野選手の強い思いが目に表れている一瞬を切り取ることができました。
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著者プロフィール

1975年千葉県生まれ。東京ビジュアルアーツ専門学校写真学科を卒業後、フリーランスのフォトグラファーとして、スポーツ写真を中心にさまざまなジャンルの撮影を行いながら、自転車ロードレースの最高峰「ツール・ド・フランス」を約20年間追い続ける。2017年より、日本スケート連盟からオフィシャル業務を請け負う有限会社ジャパンスポーツの代表であり、フィギュアスケート撮影の第一人者である菅原正治から声が掛かり、フィギュアスケートの撮影を開始。今シーズンもISUグランプリシリーズを中心に世界を飛び回っている。

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