道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔

「先入観は可能を不可能にする」
大谷翔平に影響を与えた恩師の言葉

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現在の大谷を語るうえで、高校時代、とりわけ花巻東・佐々木監督の存在は大きかったようだ
現在の大谷を語るうえで、高校時代、とりわけ花巻東・佐々木監督の存在は大きかったようだ【写真は共同】

 A4判の全34ページにわたる高校の学校案内パンフレットには、在学生徒のコメントが載るページがある。そこでは『2年B組 硬式野球部/ドリカム進学コース』の大谷翔平が紹介されていた。グレーとパープルを基調としたユニフォーム姿の写真とともに、紹介文の見出しにはこんな文字が躍るのだ。


《実際に成功した人の足跡をたどる以外に、確実に成功する方法はない》


 7年前に作られたそのパンフレットにある言葉は、岩手県内の中学生へ向けられたものであり、花巻東高校野球部の監督である佐々木洋からの16歳の大谷へのメッセージでもあった。

 佐々木監督は選手にかける言葉を大切にする指導者だ。選手一人一人の特徴に合った言葉を選んで指導する。時には、技術指導における佐々木監督の言葉を一人の選手が聞けば、自分に対する教えと真逆の話をしていると思う場合もある。ただ、それはあくまでも選手それぞれに適した指導を考えているからこそ。佐々木監督は、一つ一つの言葉には深い意味合いがあり、たとえどんなに小さな言葉でも人生をも左右するほどの大きなエネルギーがあると思っているのだ。


「たとえ選手によって真逆のことを言っていたとしても、それらはすべて正解だと思っています。『監督が言っていることは違うじゃないか』と言われるかもしれません。ただそれぞれに適した言葉や教えというものがある。だから、選手が『何だよ!』とならないためにも、そのことをしっかりと説明して理解してもらう。それぞれに上手くなってもらうためには、いろんな言葉かけがあっていいと私は思っています。また、われわれ指導者の仕事は、良い理論を選手に伝えることではありません。データを出して、それを伝えるだけが仕事ではないと思っています。選手の良さを引き出してあげること。または悪いところを修正してあげることも必要。いろんな練習のスタイルやシステムを考えながら、一人一人を知り、その強化ポイントを見極めることが大切だと思っています」


 言葉こそが大事なんだ―。佐々木監督はいつもそう言うのである。

佐々木亨

1974年岩手県生まれ。スポーツライター。雑誌編集者を経て独立。著書に『あきらめない街、石巻 その力に俺たちはなる』(ベースボール・マガジン社)、共著に『横浜vs.PL学園 松坂大輔と戦った男たちは今』(朝日文庫)、『甲子園 歴史を変えた9試合』(小学館)、『甲子園 激闘の記憶』(ベースボール・マガジン社)、『王者の魂』(日刊スポーツ出版社)などがある。主に野球をフィールドに活動するなかで、大谷翔平選手の取材を花巻東高校時代の15歳から続ける。

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