ファンタジーS、阪神JFともに鮮やかな差し切り勝ちを決めたことで、いざ来春の桜花賞候補へ一番乗りを果たしたダノンファンタジー。レースセンスもさることながら、単に仕上がり早の早熟馬ではないことは、中内田調教師が6月デビューからこの半年の成長面に触れ、こう語っている。

「新馬戦を使ったときはまだ成長段階でしたが、こういう風に成長してくれたらいいなと思っていた通り、随分と成長してくれました。競馬を1つ1つ使うたびに成長してくれますし、今日は落ち着いてパドックを周回してくれた。レースでもリズム良く走ってくれましたから、そのあたりが精神面でも成長してくれているんだなと思いましたね」

　デビュー時442kgだった馬体重は、夏を越してからの3戦全てで460kg。フィジカル、メンタル共にトレーナーいわく「いい形の成長カーブ」を描いており、その曲線はますます上昇していくはずだ、と見ている。

「このカーブをそのまま維持してくれたらと思いますし、これからもまだまだ成長してくれると思います」

　2歳チャンピオンで中内田厩舎の“ダノン”と言えば、やはり思い出すのが昨年のGI朝日杯フューチュリティステークスを無敗で制し2歳牡馬チャンピオンに輝いたダノンプレミアムだ。残念ながらクラシック直前になって順調さを欠き、ビッグタイトルをつかむことができなかっただけに今度こその思いは強いだろう。そして、牝馬クラシック第1弾・桜花賞と同じ阪神マイルの舞台を好内容で勝ったダノンファンタジーは、前述したように桜花賞候補へ“1番乗り”を果たしたと言っていい。だが、“1番手”とはまだ言えないのが、今年の2歳牝馬戦線を複雑にしているところだ。

　と言うのも、ダノンファンタジーが新馬戦で喫した唯一の敗北は、関東馬グランアレグリアにつけられたもの。そのライバルはと言うと、なんと牝馬同士の阪神JFをパスし、牡馬を相手にする次週の朝日杯FSに回ったのだ。これは、主戦のクリストフ・ルメールが香港遠征のため阪神JFで乗れないという兼ね合いもあったからだろうが、もし、その通り相手関係よりもジョッキーを優先した結果のローテーションだとしたら、「牡馬相手でも勝てる」という手応えがあるからこそ。事実、グランアレグリアは2戦目のGIIIサウジアラビアロイヤルカップで2着馬に3馬身半差の楽勝。牡馬を軽くひねっている。

　アーモンドアイが頂点に立つ現3歳世代と同様に、2歳も牝馬が世代の中心となるのか。朝日杯FSの結果次第では来春の桜花賞が世代のトップを決める超ハイレベル決戦となるかもしれない。その意味でも、次週の朝日杯は例年にない注目を集めることになりそうだ。

（取材・文：森永淳洋／スポーツナビ）