アーモンドアイ刻んだ“2分20秒6”の伝説 いざ世界へ「エネイブルと同じレースを」

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従来の記録を1秒5上回る世界レコード

アーモンドアイがジャパンカップを優勝、勝ちタイムはなんと2分20秒6という驚愕の世界レコードだった 【写真:中原義史】

 第38回GIジャパンカップが25日、東京2400メートル芝で行われ、クリストフ・ルメール騎乗の1番人気アーモンドアイ(牝3=美浦・国枝厩舎、父ロードカナロア)が優勝。好位3番手追走から最後の直線で楽々と抜け出し、名実ともに日本最強馬の座に就いた。良馬場の勝ちタイム2分20秒6は、2005年にアルカセットがマークした2分22秒1を1秒5も上回る驚愕の世界レコード。

 アーモンドアイは今回の勝利でJRA通算7戦6勝、GIレースは桜花賞、オークス、秋華賞に続き4勝目となった。また、騎乗したルメールは09年ウオッカ以来となるジャパンカップ2勝目、同馬を管理する国枝栄調教師は同レース初勝利となった。

アーモンドは今年だけでGIレース4勝目となった 【写真:中原義史】

 なお、1馬身3/4差の2着には川田将雅騎乗の4番人気キセキ(牡4=栗東・中竹厩舎)が逃げ粘り、さらに3馬身半差の3着にはミルコ・デムーロ騎乗の2番人気スワーヴリチャード(牡4=栗東・庄野厩舎)が入った。

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陸上の男子100mで9秒4台が出たような衝撃

ウイングランで大観衆に応える鞍上のルメール、しかしスタート前は一抹の懸念を抱えていたという 【写真:中原義史】

 我が目を疑った。古馬を相手にしてなおアーモンドアイの楽勝っぷりはもちろん物凄かったのだけど、それ以上に勝ち時計だ。「2分20秒6」。ちょっと意味が分からない。ロンジンの高級時計が壊れたのかと、本気で思ってしまった。陸上の男子100mで9秒4台が出たような衝撃、と言えば他のスポーツファンにも伝わるだろうか?

 とにかく、アーモンドアイはまたしても、信じられないような破格のパフォーマンスを披露したのだ。

「アーモンドアイが勝てる能力を十分持っているのは分かっているけど、何が起きるか分からないのが2400メートルのレース。その中で彼女のベストパフォーマンスを見てもらえて、本当にホッとしています」

 ルメールがまず安堵の言葉を述べた理由は、1枠1番にあった。一昨年のキタサンブラック、昨年のシュヴァルグランが連勝しているラッキーナンバーではあるものの、ジョッキー心理としては必ずしもそうではなかったという。

「1番枠というのはトリッキーで、ともすれば不利になり得る枠番です。囲まれたままスローペースになってしまったらどうにもならないですし、スタート次第で展開もかなり変わってしまうので、レースプランを立てにくい。そんな懸念を持ちながらのスタートでした」

2着キセキ騎乗の川田「普通なら押し切れるレースだったが」

絶妙ペースで逃げたキセキ(左)をアッサリ差して悠々の先頭ゴール 【写真:中原義史】

 そうした心配をよそに、アーモンドアイはジャンプするようにゲートを出たもののダッシュ良く好位へ。国枝調教師が「一番心配していた」という折り合いも問題なく、1コーナーへ突入。これまでの印象をガラリと変える3番手追走だったが、と言って引っ掛かっているわけではなく、実にリラックスした走りだった。抱えていた唯一の懸念が全て取り払われたその時の心境を、ルメールは冗談交じりにこう振り返っている。

「ゲートを上手に出ることができ、前を見たらスピードのあるキセキがいた。彼がペースメーカーになればスローにはならないから安心だったし、アーモンドアイも手の内に入れることができて、いつもの彼女のリズム。向こう正面の途中ではもう“お客さん気分”でしたね(笑)。この状態だったら、もう勝てるな、と」

 向こう正面ですでに勝利を予感していたルメールには驚きだが、実は国枝調教師も同じ思いで見ていたという。

「1コーナーでコントロールが利いていたので、これならと安心しました。また、ちょうど1000メートルの通過が59秒9ですか。この時計でこの馬場だったら、だいたい行けるかなと思いましたね」

 果たしてジョッキー、トレーナーの予感は現実となり、年上の男馬をまるで相手にしない悠々の先頭ゴールイン。天皇賞・秋に続き絶妙のペース配分で後続を沈めたキセキ騎乗の川田も「普通なら当たり前のように押し切れるレースでしたが……」と無念のひと言。相手が悪かったとしか言いようがないし、川田のこの言葉が改めてアーモンドアイの恐るべき強さを際立たせている。

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