ステルヴィオ変身これが世界トップの腕 外国騎手旋風止まず6週連続のGI勝利

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ビュイック、木村調教師ともにJRA・GI初勝利

ビュイック騎乗のステルヴィオ(手前)がマイルCSを制し新マイル王に 【スポーツナビ】

 秋のマイル王決定戦、第35回GIマイルチャンピオンシップが18日、京都競馬場1600メートル芝を舞台に争われ、ウィリアム・ビュイック騎乗の5番人気ステルヴィオ(牡3=美浦・木村厩舎、父ロードカナロア)が優勝。好位4〜5番手のインを追走からゴール前の接戦を制し、GI初勝利を決めた。良馬場の勝ちタイムは1分33秒3。

 ステルヴィオは今回の勝利でJRA通算9戦4勝、重賞は2018年GIIスプリングステークス以来の2勝目。ビュイック、木村哲也調教師ともこれがうれしいJRA・GI初勝利となった。

ビュイック、木村調教師ともにJRA・GI初勝利となった 【スポーツナビ】

 なお、アタマ差の2着には連覇を狙ったミルコ・デムーロ騎乗の3番人気ペルシアンナイト(牡4=栗東・池江厩舎)、さらに1馬身1/4差の3着には川田将雅騎乗の4番人気アルアイン(牡4=栗東・池江厩舎)が入線。1番人気に支持されたクリストフ・ルメール騎乗の安田記念覇者モズアスコット(牡4=栗東・矢作厩舎)は13着に敗れた。

「5番手くらいから競馬をしてもいいか?」

さすが世界のトップジョッキー、その手腕には恐れ入るばかりだ 【スポーツナビ】

 こうして自分の馬の見る目のなさと予想下手をさらすのは非常に恥ずかしいことなのだけど、ステルヴィオは自信の無印だった。だが、各馬がゲートを出てからおよそ1ハロン、最内4〜5番手のインを悠々と追走しているステルヴィオを見て「あっ!」、思わず声が出た。と同時に、馬券は全て紙くずに消える、そんな予感が走った。

 戦前の僕のステルヴィオ評はこうだ。スタートの出が悪い→前走から1ハロン距離短縮となれば流れにも乗りづらく、道中は中団より後方→ましてエンジンのかかりも早い馬ではないから、むしろ最内1枠1番はかえって馬群をさばきづらくなる“仇枠”になるだろう→加えてテン乗り……そうした推理からステルヴィオを絡めた目は一銭も買わなかったのだけど、そんな僕の浅はかな予想は、レーススタートから15秒と経たずにビュイックの手によってあっさりと粉砕されたのだった。

「スタートしてすごい勢いで出て行ったのでビックリしましたし、ワクワクしました。こういうレースになればいいなと思っていたんですが、実はビュイック騎手からは『枠も良いし、5番手くらいから競馬をしてもいいか?』と言われまして、それができれば言うことないんだけど……と(苦笑)」

 そうレース前のやり取りを明かしたのは木村調教師。トレーナー自身ももちろん、ステルヴィオの一番の課題はスタートと道中の位置取りと見ていた。これが思うようにいかないため、能力は誰もが認めるGI級であるのに勝ちきれない。しかし、その大きな課題の克服、つまり調教師が言うところの「それができれば」を、ビュイックはあっさりとやってのけてしまった。

厩舎の仕上げ、枠、スタート、展開「全てが良かった」

4、5番手のインという絶好ポジションからペルシアンナイトとの一騎打ちを制す 【スポーツナビ】

「もちろん、絶対にその作戦という意味ではなくて、4、5番手から行くのもアリかなと思っての提案です。調教にも乗せてもらって状態が良いのを感じていましたし、これまでのレースはちょっと足りない結果が続いていたので、そういうことがないように前めでと思ったんです」とビュイック。

 30歳の同騎手は今年、マサーで悲願の英国ダービーを制し、主戦を努めるゴドルフィンにとっても初の英国ダービーのタイトルをもたらした名手。2013年、14年と短期免許で来日し、14年GII阪神カップをリアルインパクトで制するなどJRA重賞は4勝。GIでも13年ジャパンカップは11番人気トーセンジョーダンで3着、14年有馬記念では9番人気トゥザワールドで2着と、わずか2年のうちでも鮮烈な印象を残した。今回は4年ぶりの短期免許となり、その“帰還”を心待ちにしていた人も多かっただろう。そんな日本の競馬ファンの期待に応えるかのように、騎乗1週目から大仕事を成し遂げた。

「日本のファンは世界一と思えるくらいの声援を送ってくれます。その中で初めてGIを勝つことができて、すごく感激しています。そして、これが日本での初GI勝利というよりも、まるで自分のキャリアの中で初めてGIを勝てたような、そんなイメージです。今日は忘れられない1日になりました」

 英国のみならず、フランス、アメリカ、ドバイ、香港など世界各国でGIを勝利しているトップジョッキーの腕を、まざまざと見せ付けた好騎乗。笑顔で日本GI初勝利の味を語ったビュイックはしかし、決して自身の腕をおごることはない。

「作戦やポジションよりも、馬を完ぺきに仕上げた厩舎の力のおかげです。1枠1番も良かったですし、スタートも良くて、ペースが速くなかったことも運が良かった。京都の外回りコースも乗り難しいイメージはなく、良いコースだと思っていましたし、とにかく今日はステルヴィオが強かったのが一番です」

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