リベルタドーレスで世界に恥をさらしたアルゼンチンのスーペルクラシコ

練習見学にファン7万5000人集結

リベルタドーレス決勝セカンドレグを前に気勢を上げるリーベル・プレートファン 【Getty Images】

 コパ・リベルタドーレス決勝の2日前。5万5000人ものボカ・ジュニアーズのファンがチームのトレーニングを見るためだけに聖地「ラ・ボンボネーラ」を埋め尽くし、さらにスタジアムの外には入りきれなかった2万人のファンが溢れかえった。

 その映像をテレビで見たあるスペイン人記者は、この熱はバルセロナ対レアル・マドリーのエル・クラシコでもかなわないものだと認めていた。

 ブエノスアイレスを本拠地とする2つのライバルクラブ、ボカとリーベル・プレートが南米王者を決するファイナルで対戦することは、南米フットボール連盟(CONMEBOL)にとって1960年にコパ・リベルタドーレスを創設して以来、一度も実現したことのない夢の一つだった。

 コパ・リベルタドーレスは創設当初、各国のリーグ王者のみしか出場できなかった。そして出場国が増えた後も、同国の2クラブによる決勝は認めないルールが存在していた。そのルールが撤廃されて数年。ホーム&アウェーの2試合で決勝が行われる最後のシーズンに(来年から決勝は中立地での一発勝負となり、2019年はチリのサンティアゴで行われる)、アルゼンチンが誇る世界的強豪同士のスーペルクラシコが実現した。

初戦の好勝負に注目度は増すばかり

「人間に生まれたからには死ぬまでに経験すべきもの」とさえ報じられたスーペルクラシコ。ファーストレグは期待通りの熱戦となった 【Getty Images】

 アルゼンチンで最も多くのタイトルを積み重ねてきたボカは、過去にコパ・リベルタドーレスを6度制している。対するリーベルも南米王者に3度輝いている。

 ゆえにフットボール界は、このファイナルを一大イベントとして待ち構えていた。これ以上パーフェクトな試合は存在し得ない。世界中のメディアが伝えている一戦に立ち会うべく、ブエノスアイレスを訪れるには最高の機会である。ヨーロッパの伝統ある専門誌は、アルゼンチンのスーペルクラシコは「人間に生まれたからには死ぬまでに経験すべきもの」とまで訴えている。

 しかもボンボネーラで行われたファーストレグは素晴らしい試合となり、激しい撃ち合いの末2−2のドローに終わった。コパ・リベルタドーレスの決勝はアウェーゴール2倍ルールが適用されないため、リーベルファンのみで埋め尽くされる(※)エスタディオ・モヌメンタルでのセカンドレグは、実質的に一発勝負のファイナルとなった。
(※暴力事件が後を絶たないアルゼンチンではフットボール絡みの死者が通算328人に上る。そのため2013年にはアウェーファンのスタジアム入場が禁じられた。だがその後も40人以上の犠牲者が出ている)

 これで11月24日(現地時間)に行われるはずだったセカンドレグの注目度はさらに高まり、世界中から届いた取材申請の数は1000人近くに上った。当日はFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長も観戦に訪れる予定だった。

 ワールドカップロシア大会の準々決勝でフランスに敗れ、リオネル・メッシを中心に一時代を築いたチームがまたしても深い失望をもたらしたアルゼンチンフットボール界にとって、この試合以上のプレゼントはない。誰もがそう信じて疑わなかった。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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