リベルタドーレスで世界に恥をさらしたアルゼンチンのスーペルクラシコ
暴徒襲撃、連盟の信じられない対応
練習に姿を見せたパブロ・ペレス(ボカ)の左目には大きな手当の痕が。写真右はチームドクター 【Getty Images】
リーベル対ボカのファイナルはそれらの問題全てを覆い隠すことができる最高の一戦となるはずだった。2クラブのライバル関係、ファンの情熱、歴史など、あらゆる面でレアル・マドリー対バルセロナすら比較対象にはなり得ない一戦なのだと、世界中のメディアが認めていたのだ。
しかし、全てを台無しにする事件がセカンドレグのキックオフ数時間前に起きた。警備体制の甘さがたたり、数十人のリーベルファンがボカの選手たちを乗せたバスを囲い込み、石を投げつけたのである。
その結果、ボカ一行はキャプテンのパブロ・ペレスら2選手が目を負傷し、他にも複数の選手が吐き気を訴える状態でスタジアムに到着。そのような状況にもかかわらず、CONMEBOLはまたしても馬鹿げた判断を下し、試合を強行しようと試みた。既に数時間前からファンがスタンドを埋め尽くしていたからだ。
だがボカはパブロ・ペレスが病院で検査を受けた結果、ガラスの破片が目に入ったことで視力が40%に落ちていると診断されたことを盾に、試合の開催を断固拒否した。そのためCONMEBOLはキックオフ時間を2度にわたって遅らせた末、リーベルもボカの主張を支持したことで、最終的には同会場で観客も入れて開催することを条件として翌日に試合を延期することになった。
世界中の期待を裏切った代償
緊急会議後に会見を開くCONMEBOLの会長(右)。高まるはずだった両クラブの名声は大きく傷ついた 【Getty Images】
ボカとリーベルのファイナルは世界最高の一戦となり、これまで以上に両クラブの名を世界中に広める機会となるはずだった。それが逆に、世界中に最悪のイメージを植え付けることになるとは。治安を守れない無能な警察機構、私欲に走る各クラブの独裁者たちの怠慢。この国のフットボール界には我慢という概念がなく、ルールは無視され、異常なほど暴力ばかりが注目されるようになっている。
スペインメディアは安心していい。レアル・マドリー対バルセロナはより現代的でスター選手に彩られた“クラシコ”であり続ける。そこにアルゼンチンの“スーペルクラシコ”が持つような負の歴史はない。あるのは健全なお祭り騒ぎだ。少なくとも試合が中止になることはないし、何も決まっていない状態で何時間もファンをスタンドに放置し続けるようなこともない。
今回のコパ・リベルタドーレスで誰が優勝するにせよ、アルゼンチンフットボール界は歴史的なチャンスを逃すことになった。この国の信頼は大きく失われた。その責任は自分たちにある。
(翻訳:工藤拓)