冬が来る…それでもオランダは春だ! CLと代表のサイクルが生んだ相乗効果
アヤックスとオランダが見せる期待以上の躍進
ドイツのレーブ監督は試合前、「今度の試合はオランダが本命」とコメントしていた 【写真:ロイター/アフロ】
ところが、アヤックスは第5節のAEKアテネ戦に2−0で勝って、13年ぶりのベスト16進出を決めてしまった。11月12日(現地時間)のバイエルン戦は、消化試合の色をかすかに帯びた、グループウィナーを決める勝負となった。
CL予備戦&プレーオフでシュトゥルム・グラーツ(2戦合計5−1)、スタンダール・リエージュ(2戦合計5−2)、ディナモ・キエフ(2戦合計3−1)相手に、アヤックスは4勝2分けの好成績を残し、グループステージに向けて確固たる自信をつけていた。だが、彼らはその期待を大きく上回る結果と内容を示してくれた。
オランダのサッカーは今、CL→オランダ代表→CL→オランダ代表→CLの良いサイクルが生まれている。
9月にフランス相手に1−2の接戦を演じ、10月にはドイツを3−0で下したオランダは、11月にネーションズリーグを2試合戦った。まず、オランダはロッテルダムでワールドカップ(W杯)優勝国のフランスを2−0で破った。選手たちは実にエネルギッシュにボールを追い、楽しそうにパスを回し、果敢に1対1を仕掛け、ボールを失うと壁になって相手を襲った。
しばらく、色あせて見えていたオレンジ色のユニホームが、スタディオン・フェイエノールトのカクテル光線を浴びて輝き、美しい緑のピッチの上で映えて見えた。これを“オーラ”と言うのだろう。
続く対戦相手のドイツを率いるヨアヒム・レーブ監督は試合前、「今度の試合はオランダが本命」と語っていた。ところが、中2日で迎えたドイツ戦は、オランダにとってかなりキツかった。開始20分で2−0のビハインドを負った時には、かなり得点差がついてしまうかもしれないと私は思った。それでも、終盤5分の猛攻で、オランダは試合を2−2の引き分けに持ち込み、ネーションズリーグ・グループAを首位で通過してしまったのだ。
心理戦があったかもしれない。ドイツにとっては目先の勝敗だけでなく、チームビルディングが必要な時期であることを訴えたかったのかもしれない。ともかく、レーブ監督はオランダのことを指して「本命」と語ったのだ。
「ドイツのメンタリティー」が備わったチーム
オランダには、自分たちのサッカーができない時にもしっかりと結果をモノにするメンタリティーが備わっている 【写真:ロイター/アフロ】
そのことが今、アヤックスにウィナーズ・メンタリティーをもたらしている。第3節のベンフィカ戦は0−0のまま後半アディショナルタイムに入った。ホームで0−0は悪くない結果だ。しかし、アヤックスは果敢に攻め続け、試合終了直前に右サイドバックの伏兵ノウセア・マズラウイが貴重なゴールを決めて、劇的勝利を収めた。
第4節のベンフィカ戦(アウェー)でもドラマが生まれた。前半にはGKのアンドレ・オナナが足元のボール処理をミスして、何とかタッチラインに蹴り出した。動揺したのか、オナナはロングスローに対して不用意に飛び出し、パンチを空振り。それが失点につながった。その後、アヤックスが盛り返して1−1にした後、何とか勝利をもぎ取りたいベンフィカは、パワープレーから絶好機を得る。だが、オナナが1対1のシュートを見事にセーブしてタイムアップ。咆哮(ほうこう)するオナナにチームメートが駆け寄り、手荒く祝福した。
ありえないミスをしでかしたGKが、試合が終わってみたらヒーローになっていた。チームスピリッツは最高潮だ。
ベンフィカとの2試合で見せたアヤックスの不屈の精神。ドイツ相手にオランダ代表が示した、土壇場の底力。自分たちのサッカーができない時にも、しっかり結果をモノにする「ドイツのメンタリティー」が両者には宿っている。
アヤックスの活躍は、UEFA係数ランキングに大きなポイントをもたらし、オランダリーグはオーストリアを抜いて11位になった。このままいけば、2020年からオランダリーグの優勝チームはCLグループステージにストレートインすることができる。
オランダには、これから長く厳しい冬が来る。だが、今は春だ。
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