アーモンドアイ刻んだ“2分20秒6”の伝説 いざ世界へ「エネイブルと同じレースを」

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天が二物どころか全てを与えてくれた馬

「アーモンドアイは天が全てを与えたパーフェクトな馬だ」とルメール 【写真:中原義史】

 そして、話は最初に戻って、「2分20秒6」という走破時計だ。アーモンドアイがあまりにも楽に勝ったように見えたこともあって、まさかこれほどの超速タイムが出ているとは思ってもいなかった。しかも、レコードが出るレースというのは通常、前半からハイペースなのだが、今回は前述したように最初の1000mが59秒9。GIクラスのレースでは決して速くないし、ほぼ平均ペースで流れたのに最後はこの時計である。

 ラップを見たところ、前半59秒9に対し後半1000メートルが57秒2。2秒7もラップに差があり、かつ、後半1200メートルで見ても1分8秒9という、その辺のスプリント戦より速いタイムが出ている。こんな異常なペース配分で2着に逃げ粘ったキセキも相当な馬なのだが、それを楽に差し切ったアーモンドアイとは、いったい何者なのか?

「モンスターとかマシーンとか(笑)、どう言ったらいいのか分からないのですが、天が二物どころか全てを与えてくれた馬。僕はいつも彼女のことを“パーフェクト”と言っているけど、凄い末脚だしスタミナもあるし、どこからでもレースができる万能性もある。全てを持っている馬なんてなかなかいないですよね」

 数々の世界レベルの名馬の背中を知るルメールですら、もはや「パーフェクト」以外に言葉が見つからない様子。そんなミス・パーフェクトの次なるターゲットは、日本を越えて海外へ、と期待がかかるのは当然のことだろう。国枝調教師が来年の戦略について次のように明かした。

「今回、日本で行われたグローバルなレースに勝つことができたので、来年はできれば海外に出るチャンスがいただければと思っています。レースに関してはオーナーサイドとの協議になると思いますが、皆さんが思っているようなレースで行きたいと思っています」

ホーリックスvs.オグリキャップの世界レコードから30年

来年はいざ海外へ、凱旋門賞を初めて勝つ日本馬となるか 【写真:中原義史】

 具体的な名前こそ出さなかったが、「皆さんが思っているレース」というのは、これはもう凱旋門賞しかないだろう。海外の記者からの「アーモンドアイは凱旋門賞を初めて勝つ日本馬になると思うか?」というストレートな質問にも、トレーナーは「(凱旋門賞を連覇した)エネイブルと一緒にレースをしてみたいですね」とキッパリと回答。これにはその海外記者も「素晴らしいマッチレースになると思う」と興奮を隠せない様子だった。

 そして、ルメールと言えば、その質問に対して国枝調教師が答える前に「イエス!」と即答。母国フランスで日本馬に騎乗して、自身にとっても初の凱旋門賞を勝つという夢の実現へ、大きな手応えを得ているのかもしれない。

「アーモンドアイはとにかくスペシャルな馬だから、どこに行っても今日みたいなレースができると思う。輸送などの不利はあるけれど、少なくとも今一番世界に対抗できる能力がある馬だと、僕は信じているよ」

 思い返せば平成最初のジャパンカップは、ホーリックスとオグリキャップの壮絶死闘の末、勝ち時計2分22秒2は当時としては考えられないようなレコードタイムだった。世界レコードに始まり、世界レコードで幕を閉じた平成のジャパンカップ史。2分20秒6の衝撃とともに最後の勝ち馬として歴史に名を刻んだアーモンドアイは、新たな元号を象徴するスターホースとして、今度は凱旋門賞史にその名を刻むだろうか。その答えはルメールが即答したように、「イエス!」であることを願いたい。

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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