アヤックス、PSVがCLで奮闘する影で 深刻な“2強以外”の弱体化

中田徹

消えた「サブトップ」の存在

堂安律(右)の所属するフローニンゲンなど、“2強”以外のチームは厳しい戦いを強いられている 【Getty Images】

 CLの激闘が終わり、アヤックスもPSVも週末のオランダリーグに戻ってきた。PSVは、最下位フローニンゲン相手に大いに苦しんだが、またしても87分、今度は右SBデンゼル・ダンフリースが60メートルの突破からシュートを決めて2−1で競り勝った。これでPSVは開幕から10連勝だ。

 相手チームの選手が足をつって苦しむ終盤、アヤックスはマズラウイ、PSVはダンフリースという右SBたちが伏兵となり、決勝ゴールを決めてしまう。勝利への強い意思、エネルギー、パワー、決定力ー。試合後、私は全国紙の記者に「オランイェも、アヤックスも、PSVも『ドイツ人のメンタリティー」』を得たな」とつぶやくと、「おまえ、それはいい表現だな」と同意してくれた。
 
 堂安律はPSV戦で、CLクラスの試合をしたことになる。さすがに負けてしまったということもあり、浮かない表情ながらも「やっていて楽しかった。(この試合では右サイドを務めて)ライン際でボールを持って自分でもワクワクした」といつもより1クラス上の試合を楽しんだようだった。

 レベルが高い試合だから、課題も浮かび上がる。自陣での不用意なドリブル、ミスパスは一気にピンチに陥るということを、きっと堂安も痛感しただろう。だから、若い選手はこういう試合を数多くこなすことが大事になってくる。

 28日は、ヨハン・クライフ・アレーナでアヤックス対フェイエノールトの試合があったが、アヤックスは何の苦もなく3−0で勝ってしまった。開始5分でフェイエノールトは退場者を出し、これでもう勝負が決まったようなものだった。

 あのベンフィカ戦の熱気、ブーイング、スタジアムの揺れは、フェイエノールト戦にはなかった。アヤックス対フェイエノールトは、ただのオランダリーグの1試合になってしまった。デ・クラシケルと呼べるのは、スタディオン・フェイエノールトで行われるフェイエノールト対アヤックスの1試合だけなのかもしれない。

 オランダ代表とアヤックスがヨーロッパの舞台で復活の兆しを見せ、PSVはオランダリーグを引っ張り、CLで強豪相手に必死に食らいついている。だが、三大クラブの1つであるフェイエノールトが没落。AZ、ヘーレンフェーン、ユトレヒト、フィテッセ、フローニンゲンといった中堅クラブも今一つで、“サブトップ”というポジションがなくなってしまった。

 今、オランダではアヤックス、PSVを除いたチームの弱体化が深刻な議題にあがっている。日曜日のアヤックス対フェイエノールトは、その象徴的なゲームだった。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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