アヤックス、PSVがCLで奮闘する影で 深刻な“2強以外”の弱体化

中田徹

難しい試合を引き分けに持ち込んだPSV

トッテナムと2−2で引き分けたPSV 【写真:ロイター/アフロ】

 アヤックスが50・50(フィフティ・フィフティ)の試合を勝利に持ち込んだとするならば、PSVはトッテナムに惨敗する可能性もあった試合を、引き分けに持ち込んだ。

 おそらくPSVの狙いは、ハイプレスからのショートカウンターだったはず。しかし、トッテナムは我慢強く自陣の狭いエリアでパスを回し、なんとかPSVのプレスをかいくぐると、一列前のフリーマン、ないしは逆サイドのスペースにボールを運んだ。つまり、PSVのプランは壊れてしまったのだ(それでも、PSVはプレッシングからゴールを奪うのだから、サッカーは不思議で面白い)。

 ボールを持っても、MFで試合のスピード、強度についていけない選手がいたのは痛かった。つまり、レベルが違った。PSVが大差をつけられて負けていてもおかしくない内容だった。

 だが、ファン・ボメル監督は後半途中から3トップの配置を変えて、右のFWイルビング・ロザノ・バエナをストライカーに、ストライカーのルーク・デ・ヨングをトップ下に置くことで、試合の流れを変えるポイントを探った。それが、79分、相手GKウーゴ・ロリスの退場シーンにつながった。クリスティアン・エリクセンのパスをインターセプトしたMFパブロ・パウリーノ・ロザリオの縦パスが、ロザノに通ってドリブルで前進。ロリスはファールで止めるしかなく、退場した。

「相手ゴールの近い位置にロザノを置いたことが功を奏した」(試合後のファン・ボメル監督)

 数的に優位に立ったPSVは息を吹き返して攻め込み、土壇場で2−2に追いつくことに成功した。

 トッテナム戦では集団でのプレスがハマらなかったPSVだったが、それでもロザノの守備は光っていた。30分にPSVが奪った先制ゴールは、トッテナムのセンターバック(CB)トビー・アルデルバイレルトのボールをロザノが盗んでシュートを決めたものだった。ワールドカップ(W杯)ロシア大会でもロザノの守備は利いていたが、オランダでは「相手DFが大丈夫と思ってボールを持っていても、それ以上のスピードでロザノが足を出してボールに触ってしまう」と分析している。もう、ロザノが次のステップに進むのは間違いないだろう。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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