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堂安律、チームの苦境を成長の糧に
1トップ、PK失敗も「自分と向き合う」

1トップ抜てきもロングボールでは……

堂安はADOデンハーグ戦で1トップを務めるもシュートゼロに終わり、ゴールは遠かった
堂安はADOデンハーグ戦で1トップを務めるもシュートゼロに終わり、ゴールは遠かった【Getty Images】

 10月6日、フローニンゲンはADOデンハーグに対して0−1で敗れた。1トップで抜てきされた堂安律は前線で孤立するシーンが目立ち、シュートゼロで終わった。

 第8節を終えて、チームは17位という大不振に陥っている。総得点はわずか4(1試合平均0.5点)に対して、総失点は15(1試合平均2点弱)だから、これでは勝てない。今季のフローニンゲンに対して、私にはプレシーズンを見たときから嫌な予感があったのだが、これほどまでの迷走はさすがに予想外だった。


 今季はミモウン・マヒの調子が上がらず、堂安とのダブルエースの関係は解消された。今、20歳の堂安はエースとしてチームを勝たせる責任を負わされている。

 第6節のAZ戦(1−3)でフローニンゲンは退場者を2人出してしまった。バイス監督は苦肉の策として堂安を前線に一人残した。この苦境の中、堂安はボールを収めたり、拾ったりして敵陣で時間を作る健闘を見せていた。


 このときの良いイメージが、ADOデンハーグ戦における堂安の1トップ抜てきにつながったのかもしれない。しかし、プレシーズンからフローニンゲンが続けてきたのは、精度の低いロングボールによる攻撃だ。堂安の1トップと、フローニンゲンのサッカーは親和性が低い。1トップとして起用されたことに関し、堂安は「個人的には、どこでもやってやろうという気持ちでやってます」と言ってから、こう続けた。


「だけど、俺を1トップで置くんだったら置くなりの戦術が必要だと思います。それでもロングボールに頼っちゃうと、じゃあ、俺を置いた理由は何なの、という話になる。それで難しい展開になりました」


 42分、左サイドに開いた堂安がクロスを入れて、中に突っ込んだワルマーダムの裏でアントゥナがフリーになってボールを受けてシュートを外す好機があった(判定はオフサイド)。だが、ADOデンハーグ戦の堂安は「まあ、あれぐらいだった」と本人が述懐した通り、このクロスのシーン以外、相手にとって驚異になるプレーがなかった。1トップという、最も相手ゴールに近いポジションでプレーした堂安だったが、最も相手ゴールから遠ざかってしまった結果に終わった。

AZ戦ではPK失敗「自分にガッカリ」

 今季のオランダリーグで、堂安のゴールはわずか1つ。それでも、キレの良いドリブル、視野の広いパス、強靭なフィジカルを見せている。フローニンゲンのホームゲームでは、堂安がボールを持つとスタンドにざわめきが起こることもある。


 第4節ズウォーレ戦の試合終了間際、自陣から単独で相手ゴール前まで持ち込もうとしたドリブルは、敵の故意のファウルによって止められてしまったが、見る者を「このファウルがなければ、我々はその先にどういった景色を見ることができたのだろう」と思わせる迫力があった。試合後の彼は「全員抜いてやろうと思っていた」と残念そうだった。決して、堂安個人としての調子は悪くない。


 堂安にとって痛恨だったのは、1−1で迎えた前半のアディショナルタイムに外したAZ戦のPK失敗だった。

「正直、責任を感じてチームの中心としてやらせてもらってます。自ら試合前に『PKは俺が蹴る』と言ってましたし。落ち込むというより、今から考えても取り返しのつかないことなんで、自分にガッカリしている。それでよく『自分がエース』と言えてたなという感情になりますね」(AZ戦後の堂安)


 ズウォーレ戦で決死の単独ドリブルを故意に削られ止められた後、AZ戦で相手チームの選手が倒れたままいつまでも起き上がらないとき、トゥエンテ戦(オランダカップ)で見せた相手への強烈なタックル……。今季の堂安は試合終盤に相手ともみ合うケースが多い。

 チームが負けていることに対するフラストレーションもあるのだろう。しかし、堂安はこうも言うのだ。


「もっと激しくガツガツいきたいのに、チーム全体がいけてなかったし、自分もなかなか激しくいけてなかった。正直、チームにカツを入れるためにも、ああいうプレーをしないといけないと思ってましたけど、少し遅すぎた」(トゥエンテ戦後の堂安)

迷走するフローニンゲン、降格の不安も

 トゥエンテは、オランダの中では予算規模の大きなクラブだが、それでも2部リーグに降格してしまった。そのトゥエンテに、オランダカップ1回戦でフローニンゲンは負けてしまったのだ。試合後、スタジアム正面出入口は怒り狂ったサポーターに占拠された。


 その翌朝、9月28日のオランダの公共放送『ラジオ・エエン』は全国ニュースの中で「フローニンゲンは地域のビッグクラブ。だが、最近は観客動員数も低迷している上、今季はアマチュアでしか指揮を執ったことのない36歳のバイス監督の下、結果が出てない。『トゥエンテが2部リーグに降格したんだから、フローニンゲンが降格してもおかしくない』――。そんな恐れもあって、サポーターはスタジアムの正面出入口を固めた。GKセルヒオ・パットがAZ戦後、電車内で暴れて拘束され、チームのキャプテンを辞めたりと、今季のフローニンゲンは迷走しており、バイス監督やクラブ首脳陣に対するプレッシャーは高まってます」とリポートした。

 序盤のつまずきの一言では片付けられない、フローニンゲンの現況なのだ。


 日本代表デビューマッチとなるコスタリカ戦で好プレーを見せ、オランダでの成長をファンに印象付けた堂安だが、フローニンゲンに戻ってきてからは難しい時期を過ごしている。ADOデンハーグ戦を終えた堂安はこうも言った。


「チームは良くない状態ですが、個人にフォーカスすると良い経験になってます。こういうチームが悪いときを経験すると、また自分としても一回り大きくなると思うので、こういう悪い中でも無駄にせずに自分と向き合っていきたいと思います」


 悪い時期から逃げるのではなく、しっかり向き合って成長の糧にする意思を強く持ちながら、堂安は10月シリーズの日本代表に合流する。

中田徹
中田徹
1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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