アヤックスに漂う、CL躍進の気配 歓喜に「揺れる」ホームスタジアム
アヤックス定番の応援歌「スリー・リトル・バーズ」
ボブ・マーリーの「スリー・リトル・バーズ」はアヤックス定番の応援歌になっている 【写真:ロイター/アフロ】
くよくよするなよ。全てうまくいくから
今朝起きたら、日が昇ってにっこり
強いチームだって、負けることもあるのがサッカー。名門クラブにも低迷期が訪れるのがサッカー。それでもアヤックスはアヤックス。そんな心情を明るく代弁するスリー・リトル・バーズは、アヤックス応援ソングの定番のひとつになっている。
ボブ・マーリーの息子、キマーニ・マーリーは8月25日(以下、現地時間)のオランダリーグ、アヤックス対エメンをヨハン・クライフ・アレーナの客席から観戦し、サポーターの歌うスリー・リトル・バーズを聞いた。心揺さぶられたキマーニは「僕は、ここで歌ってみたい」と語った。
それから1カ月も経たぬ9月19日、キマーニはヨハン・クライフ・アレーナの特設ステージにいた。そこはチャンピオンズリーグ(CL)グループステージの初戦、アヤックス対AEKアテネのハーフタイムという壮大な舞台だった。
キマーニとサポーターがスリー・リトル・バーズを一緒に歌い出す。やがて、両チームの選手たちがピッチに戻ってきた。ここでキマーニの舞台は終了した。だが、サポーターはアカペラでスリー・リトル・バーズを歌い続ける。そして、しばらくして歌声が止んだ。
かつては熱狂とは程遠いスタジアムだったが……
ヨハン・クライフ・アレーナは文字通り「揺れる」スタジアムだ 【写真:ロイター/アフロ】
その歌を背に、ラッセ・シェーネがCKを蹴る。こぼれ球をダビド・ネレスがゴール前に入れる。そこには誰もいない。いや、いた! ニコラス・タグリアフィコが走り込んできた。ボレーシュートがゴールネットに突き刺さった。瞬間、スタジアムが揺れた。
アヤックスの先制ゴールは、スリー・リトル・バーズとセットプレーが奏でた、美しいコラボレーションだった。
ヨハン・クライフ・アレーナは文字通り、揺れるスタジアムだ。自動車専用道路の上に浮くUFO状の設計のせいか、サポーターが一斉に飛び跳ねると、その振動で観客席が揺れるのだ。
アムステルダム・アレーナとして、このスタジアムが開場したのは1996年春だった。あまりにモダンすぎたのか、当時はスタジアムの雰囲気は熱狂とは程遠く、「観客たちは、まるでディズニーランドに遊びに来ているようだ」と皮肉られる始末で、「名スタジアム」と呼ぶには無理があった。