ロペテギが陥った「四面楚歌」状態 マネジメントに不可欠なフロントとの関係
クラシコでは1−5と歴史的大敗を喫する
クラシコでは1−5とバルセロナに歴史的な敗戦を喫したレアル・マドリー 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】
クラシコ敗戦の記者会見では、「悲しみはあるが、まだ10月で指揮を執り続けるエネルギーは残っている」と解任を既定路線として厳しい質問を浴びせかける記者たちを前に、続投の意思を誇示した。とはいえ、「スポーツ面での責任というのは最終的には監督が負うもの」と、自身でも解任の流れは理解しているというコンテクスト(文脈)も残した。
29日の『マルカ』紙の一面に「フレンだけの責任ではない」という見出しが載ったように、レアル・マドリー寄りのメディアもサポーターも、監督には同情の余地があると感じている。クラシコの前にはイスコが「監督解任など狂気の沙汰」と発言してロペテギを擁護したように、今回の大敗を受けても主力選手たちからは監督の采配や手腕に対して批判的、懐疑的なコメントは出てきていない。
試合直後にピッチ上でフラッシュインタビューを受けたカゼミーロは「今日の1−5という結果は、僕らの今シーズンを象徴するもの。パフォーマンスや戦術云々の話ではなく、全てに原因がある」とした上で、「今監督の話をすることはできない。ピッチでプレーするのが選手である以上、責任は僕たち選手にある」と発言した。また、試合後レアル・マドリーの選手として唯一、ミックスゾーンに出てきてメディア対応を行った主将のセルヒオ・ラモスも「僕たちは誰であろうがチームを指揮する立場の監督に忠誠を誓うだけ。(監督交代のような)決断はフロント上層部が行うもの」と冷静なコメントを残している。
ただラモスが受けた「コンテのような厳格な監督が次に来ると言われていることについて、選手として同意しますか?」という質問の答えはとても興味深いものだった。「リスペクトとは勝ち取るもので、人から押し付けられるものではない。最終的に最も重要なのはどれだけ戦術に長けているかではなく、ロッカールームのマネジメントができるかどうかだ」
求められるのは戦術よりも「マネジメント」
CL3連覇をもたらしたジダン(右)の退団はペレス会長にとっても想定外の出来事だった 【写真:ロイター/アフロ】
クリスティアーノ・ロナウドの放出は規定路線だったレアル・マドリーだが、フロレンティーノ・ペレス会長にとって、ジダンの退団は想定外の出来事だった。慌てたペレス会長は今夏ロペテギに監督オファーを出す前に、ドイツ代表のヨアヒム・レーヴ、トッテナムのマウリシオ・ポチェッティーノ、リバプールのユルゲン・クロップ、ユベントスのマッシミリアーノ・アッレグリ、チェルシーのコンテといった所属も契約もある指揮官たちの引き抜きを次々に画策するも全て失敗。6番目でようやく当たりをつけることができたのが、当時スペイン代表監督としてロシア入りしていたロペテギだった。
ロペテギを推薦したとされているのは彼のサッカーや戦術のメリットを理解していたセルヒオ・ラモスらスペイン代表選手たちだと言われているが、そもそも「ロペテギありき」どころか6番目の外れクジとしてペレス会長からオファーを受け、しかもスペイン代表監督を電撃解任された経緯もあって、監督としての権限やリーダーシップを発揮しにくい状況にあったのは想像に難くない。
また、ロペテギの父親のホセ・アントニオ・ロペテギがクラシコ前に『エル・パイス』紙のインタビューで「息子は年間50ゴールを奪われた」と毒づいたように、マドリーの監督に就任してからのロペテギは、自分がフロントにオーダーした補強をことごとくスルーされている。年間50ゴールを決めるロナウドと肩を並べる程のフィニッシャー獲得が無理難題であることは理解していたロペテギだが、まさか前線の穴埋めが移籍マーケットの閉まる直前にリヨンからマリアーノ・ディアスを買い戻す程度に終わるとは思っていなかった。
フロントの肝いりで4500万ユーロ(約56億円)以上の移籍金を投じてFWヴィニシウス・ジュニオールをフラメンコから獲得したマドリーだが、ロペテギはいったん、プレシーズンで彼を使う姿勢を見せながらも、シーズンに入ってからは頑なにBチームに降格させていた。このクラシコでも、わざわざクラブとしてBチームで前節退場処分を食らったヴィニシウスのイエローカードを取り消す手続きを取り、バルセロナへの遠征メンバーに含めながら、試合のベンチ入りから外す決定をロペテギは下している。ヴィニシウスの扱いひとつとっても、フロントとロペテギの関係が決して良好ではないことが見え隠れする。