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スペインの失われた過去と見えない未来
ロペテギ、イエロ……そして新監督

パスサッカーの終えんを思わせる負け方

ロシアに敗れ、ラウンド16で姿を消したスペイン
ロシアに敗れ、ラウンド16で姿を消したスペイン【Getty Images】

 ワールドカップ(W杯)ロシア大会で優勝候補だったスペインがベスト16で敗退。それだけで十分ショッキングなのに、その負け方がひどかった。開催国とはいえ、格下のロシア相手に120分間いたずらにパス本数だけを積み重ね、シュートすら打てないままPK戦に突入。あくび連発の退屈な試合で国民に悪い予感を抱かせた揚げ句、予感的中で敗れた。


 W杯ロシア大会が終わっただけでなく、パスサッカーの終えんをも思わせる終わり方だった。これで4年前のブラジルW杯、EURO2016に続く3大会連続の挫折。EURO2008に優勝した後、2年後の南アフリカW杯で念願の世界制覇、さらに2年後EURO2012を連覇し、飛ぶ鳥を落とす勢いだったスペイン代表の「勝利の10年」は完全に幕を閉じた。


 開幕前、「スペインの『らしさ』はこうして育まれた 勝利の10年につながった協会の成功モデル』と題する記事を書いた。今読み返してみると、わが不明をお詫びしたい気持ちでいっぱいになる。特に「代表監督の人事に関しては、スペイン協会は非常にデリケートだった。ロシア行き直前に新監督とチームにこれ以上ないほどの重圧を与えてしまった日本協会とは対照的に……」との箇所は2カ月前に戻って消してしまいたいほどだ。ロシア行き直前にチームにこれ以上ないほどの重圧を与えてしまったのは、日本ではなくスペインの方だった。

盛んに戦犯探しを行っているスペインメディア

レアル・マドリーと来季の監督就任の契約を結び、スペイン代表監督を電撃解任されたロペテギ前監督(左)
レアル・マドリーと来季の監督就任の契約を結び、スペイン代表監督を電撃解任されたロペテギ前監督(左)【Getty Images】

 挫折の責任者は誰か? ロシア戦後、スペインメディアは盛んに戦犯探しを行っている。通常、コンペティションの不成績の責任者として槍玉に挙がるのは監督であり選手なのだが、今回は、ルイス・ルビアレス(スペイン協会会長)、フロレンティーノ・ペレス(レアル・マドリー会長)、フレン・ロペテギ前監督が“三悪”として名指しされている。


 誰が1位で誰が3位なのかは指摘するメディアによって違う。レアル・マドリー系のメディアはルビアレス会長を、バルセロナ系のメディアはフロレンティーノ会長を諸悪の根源とする、といういつもの身贔屓(みびいき)の構造である。だが、戦犯の名こそ違えすべてのメディアの見解は、“監督の交代が決定的な影響を与えた”ということでは完全に一致している。


 7月13日、W杯開幕の1日前、スペインのデビュー戦の2日前に協会はロペテギ監督を電撃解任した。日本のヴァイッド・ハリルホジッチ前監督解任が分の悪いギャンブルだったとするなら、これはもう想像し得る最悪の決断である。だが、スペイン協会にはそうせざるを得ない理由があった。ロペテギが秘密裏にレアル・マドリーと接触して来季の監督就任の契約を結び、あろうことかクラブが公式発表してしまったのだ。


 W杯期間中は去就について明かさないのがチーム内のルールなのだが、それをリーダーたる監督が率先して破ってしまった。しかもロペテギは協会職員という立場なのに。ルビアレス会長はこの部下の裏切に激怒、「重大な背信行為があった」として解任に踏み切った。解任がチームに悪影響を与えることは分かり切っていたが、筋を通すにはこれしかなかったのだ。

木村浩嗣
元『月刊フットボリスタ』編集長。スペイン・セビージャ在住。1994年に渡西、2006年までサラマンカに滞在。98、99年スペインサッカー連盟公認監督ライセンス(レベル1、2)を取得し8シーズン少年チームを指導。06年8月に帰国し、海外サッカー週刊誌(当時)『footballista』編集長に就任。08年12月に再びスペインへ渡り2015年7月まで“海外在住編集長&特派員”となる。現在はフリー。セビージャ市内のサッカースクールで指導中。著書に17年2月発売の最新刊『footballista主義2』の他、『footballista主義』、訳書に『ラ・ロハ スペイン代表の秘密』『モウリーニョ vs レアル・マドリー「三年戦争」』『サッカー代理人ジョルジュ・メンデス』『シメオネ超効果』『グアルディオラ総論』(いずれもソル・メディア)がある

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