キセキのチェンジアップ天皇賞 「競馬巴投げ!第179回」1万円馬券勝負

乗峯栄一

警備員に連行されるかもしれないが

[写真3]ステファノス 【写真:乗峯栄一】

 ぼくは競馬と車の運転と女性の三つが同じぐらいの歴史を持つが、いまだに自信がないということでもこの三つは共通していると、前に書いた。たとえば助手席に特に初対面の人が乗ると「こいつ、運転ヘタクソだなあ」と思ってるんじゃないかと疑心暗鬼が出てきて運転がうわずる(危ない!)。

 ごくまれに女性と盛り上がっても「この男、ヘタねえ、そんなことするの? 考えられなーい」などと相手が思ってるんじゃないかと疑心暗鬼の雲が沸き上がり、自分でも驚くような逆上行為に走る(これも危ない!)。

 競馬も同じだ。競馬はチェンジアップだ。少しでも油断すると「あんたの読み筋、ふふ、もう見切ったね」などと周りのおっさんが仕掛けてくる。ここで「オレの予想はもう見切られてるのか。やっぱり予想紙の印やオッズ順位に逆らっちゃダメなのか」などと“謙虚”になるから馬券が取れないのだ。そういう動揺は馬券ライバルたちの思う壺なのだ。

 競馬場スタンドに着いたら、まず「はっはっは、お前らが見切ったという、その見切り方すら既に私は見切っている」と大声出すことだ。

 ひょっとしたら警備員に連行されるかもしれないが、そんなことは構わない。疑心暗鬼と戦うのはチェンジアップを投げる者の宿命だ。キミのチェンジアップはブレてはいけない。

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著者プロフィール

 1955年岡山県生まれ。文筆業。92年「奈良林さんのアドバイス」で「小説新潮」新人賞佳作受賞。98年「なにわ忠臣蔵伝説」で朝日新人文学賞受賞。92年より大阪スポニチで競馬コラム連載中で、そのせいで折あらば栗東トレセンに出向いている。著書に「なにわ忠臣蔵伝説」(朝日出版社)「いつかバラの花咲く馬券を」(アールズ出版)等。ブログ「乗峯栄一のトレセン・リポート」

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