平成最後の菊花賞馬はこのレースがデビューから4戦目。これは史上最少キャリアでの菊花賞制覇となる（それまでの記録は1946年アヅマライ、1987年サクラスターオーの6戦）。今年の3歳世代はアーモンドアイにすべての話題を持っていかれたかと思ったが、牡馬でも天才肌のスター候補生が新たに誕生したことになる。キャリアもそうだし、7月1日のGIIIラジオNIKKEI賞からのぶっつけというのも、これまでになかった常識外れのローテーションだ。

　こんなことができるのも、手塚調教師をはじめとした厩舎、牧場スタッフの手腕の賜物だが、それに満点の答えで返したフィエールマンの図抜けた能力があってこそだろう。ルメールが母国の若きスーパースターを例えに、こんなことを言った。

「エムバペも19歳で（サッカー）ワールドカップのチャンピオンになりました。才能があれば経験はいらないんです」

　そんな“才能の塊”であるフィエールマンの次戦だが、ラジオNIKKEI賞からぶっつけで菊花賞に臨まなければならなかったように、手塚氏いわく「まだ体力が追いついていない」状態。今回も相当な消耗があったようで、「しっかりとケアに努めてから、次走はオーナーとゆっくり相談していきたい」とのことだ。

　そもそも年明けデビューだから、まだ競走生活は1年にも満たないルーキーであり、だからこそ今後の成長、伸びしろは計り知れない。慌てずじっくりと万全の状態に仕上げ、いざ古馬との戦いに臨んでほしいところ。その時は真価を問われることになるだろうが、フィエールマンならばまたもそんな壁を一足飛びにしてしまうのではないか。

　そして、殊勲のルメールと言えば、共同インタビューの最後に「また来週」と締めのひと言。これはもちろん、天皇賞・秋もレイデオロで勝つよ、という“予告ゴール”なのだろう。

（取材・文：森永淳洋／スポーツナビ）