【ノア】丸藤20周年記念はKENTAに激勝 大会成功に「プロレスの力ってすごい」

高木裕美

相手は「アイツしかいない」とKENTAを指名

丸藤(左)の20周年記念試合は、盟友でありライバルのイタミ・ヒデオ(KENTA)との30分を超える激闘となった 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 プロレスリング・ノアの「丸藤正道デビュー20周年記念大会『飛翔』」が1日、東京・両国国技館で開催され、超満員となる6285人を動員した。

 丸藤は1979年、埼玉県生まれの38歳。埼玉栄高校レスリング部卒業後、98年に全日本プロレスに入門し、同年8月にデビュー。故・ジャイアント馬場さんの最後の弟子であり、故・三沢光晴さんの付き人を務めた。2000年にはプロレスリング・ノアに移籍し、旗揚げ戦に出場。ノア内のすべてのGHCタイトル(ヘビー、タッグ、ジュニア、ジュニアタッグ、白GHC)を制覇したほか、史上初かつ唯一となるジュニア3大メジャータイトル(新日本プロレスのIWGPジュニア、全日本の世界ジュニア、ノアのGHCジュニア)も獲得。プロレス大賞ではベストバウトを3度(06年KENTA戦、08年近藤修司戦、16年オカダ・カズチカ戦)受賞するなど、まさに“方舟の天才”の名にふさわしい活躍を果たしている。

 メインイベントでは丸藤正道が、宿命のライバルであったKENTAこと現WWEスーパースターのヒデオ・イタミと一騎打ちを行った。

 丸藤は00年5月にKENTAのデビュー戦の相手を務めると、03年には共に初代GHCジュニアタッグ王者に君臨。「イケメンタッグ」として若い女性を中心に人気を博し、約2年間にわたり9度の防衛に成功した。その後はライバルとなり、GHCジュニアヘビー級やGHCヘビー級王座などを賭けて対戦。06年10.22武道館での一戦は同年のプロレス大賞ベストバウトを獲得した。また、08年10.27武道館で行われた丸藤の世界ジュニアヘビー級王座とKENTAのGHCジュニア王座を賭けたWタイトル戦では、60分時間切れとなるなど、数々の死闘を展開。両者の最後の一騎打ちとなった13年7.7有明コロシアムでは、36分42秒、KENTAがgo2sleepで勝利し、GHCヘビー級王座防衛に成功。通算対戦成績は丸藤の10勝3敗1分となっている。

 KENTAは以前から憧れていたWWEにチャレンジするため、14年4月末にノアを退団。ノアラストマッチとなった5.17後楽園では、丸藤が「オレの隣に立ってくれ」とタッグ結成をリクエストし、2人で組んで杉浦貴&中嶋勝彦組と対戦。KENTAが中嶋に生ヒザでのgo2sleepで勝利していた。

 今回、20周年記念大会開催にあたり、丸藤は「アイツしかいないでしょ」と、世界最大のプロレス団体WWEとの交渉に尽力し、夢の実現にこぎつけた。

危険技も狙うなど30分を超える激しい戦いに

場外へのパイルドライバーなど、危険な技も飛び出した 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 和田京平レフェリーがゴングを要請し、約5年ぶりの一騎打ちがスタート。

 客席からは「ヒデオ」ではなく「KENTA」コールが起こる。序盤の蹴りをかわす攻防だけでもどめよきが起こる中、丸藤は10分過ぎ、鉄柵をリング側に寄せてケブラーダを狙おうとするが、ヒデオが阻止。10年前に武道館で放った際に、丸藤が鉄柱にノドを強打しながらも、60分戦い抜いた、思い出の技だ。さらに、ヒデオと丸藤は川田利明さんが解説席で見守る前で顔面ステップキックの応酬。丸藤の断崖式パイルドライバーに対し、ヒデオも鉄柵超えの場外ダイビングフットスタンプを狙うが、丸藤が全力で阻止する。

 20分過ぎ、丸藤の雪崩式不知火、逆水平チョップ、トラースキック、不知火が飛び出すも、カウントは2。ヒデオもブサイクへのヒザ蹴り、ショートレンジラリアット、スワンダイブ式ミサイルキック、ダイビングフットスタンプから、ついにgo2sleepを発射するも、丸藤はカウント2でクリアし、虎王をさく裂。30分を超えたところで、ヒデオはパワーボム、キック連打から再度go2sleepを決めるが、丸藤はこれをはね返すと、大「丸藤」コールの後押しを受け、虎王、トラースキックの猛ラッシュ。さらに後頭部への虎王からポールシフト式エメラルドフロウジョンで決着をつけた。

 試合後、丸藤はヒデオの腕をつかんで起こすと、互いに礼をして抱き合った。

久しぶりのヒデオに「違いも感じた」

ノアを退団した選手、関わりがあった選手が集結し、丸藤も「プロレスの力ってすごい」と感謝した 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 敗れたヒデオは「厳しい戦いだった。勝てなくて残念」と悔しさをにじませながらも、「久しぶりのノアのリング、うれしかった」と約4年3カ月ぶりの感触に笑顔。客席からの「KENTA」コールには、「こだわってないんで、呼びやすい方、盛り上がりやすい方、なじみのある方で呼んでもらえれば」と語り、「今日はイタミ・ヒデオでもあり、KENTAでもあった。自分がどこまでできるかを確認したかった」と、名前や所属など関係なく、1プロレスラーとして戦い、丸藤を祝福したいという思いを明かした。

 一方、記念大会を勝利で祝った丸藤は、「やっぱり最高の男。戦ってる間、いろいろ思い出したし、いろいろな感情が湧き出してきた」と、試合中に思わず名前を叫んでしまった「KENTA」との歴史を振り返りつつも、「違いも感じた」と、現在のヒデオ・イタミらしさも実感。また、自分の夢を追いかけ、世界を股にかけて戦うヒデオの活躍にもジェラシーをのぞかせた。

 今大会では、「自分のワガママ」を貫き、実現不可能かと思われたメインのカードをはじめ、ノアを退団したり、過去に関わりのあった選手たちが多数参戦。「プロレスの力ってすごい。感謝しかない」と大成功を実感したことにより、「年を取って、キャリアを作って、自信がなくなってきていたのが勢いついた」と明日からのノアでの戦いにも気合十分。「次にこれだけの大会をやれるのは引退の時かも。まだまだ引退できないな」と、次なるビッグマッチに向け、再び“充電”を始めることを決意した。

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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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