BMXの16歳・中村輪夢、高まる注目の中で 京都の仲間は「ほっこりする」存在

矢内由美子
 2020年東京大会そして世界に向けて、それぞれの地元から羽ばたくアスリートを紹介する連載企画「未来に輝け! ニッポンのアスリートたち」。第25回は京都府出身、自転車競技・BMXの中村輪夢(りむ/ウイングアーク1st)を紹介する。

「自転車に乗っている時間が一番好き」

東京五輪で採用される新種目BMXフリースタイル・パーク。京都出身の16歳、中村輪夢の存在感が増している 【Naoki Gaman】

 直径20インチ(約51センチ)の車輪がついた自転車を操り、さまざまなサイズのジャンプ台を使いながら1分間の演技で競うBMXフリースタイル・パーク。2020年東京五輪から採用された新種目のエース、中村輪夢は京都市に住む16歳の高校2年生だ。
 17年11月に中国・成都で開催された第1回世界選手権では、最年少で決勝に進出して7位入賞。同12月に岡山市で開催された第1回全日本選手権では初代チャンピオンに輝いた。
 抜群のスピードを武器に空中を高く舞い上がり、「バックフリップ(後方宙返り)」「テールウィップ(ハンドルを握って車体を360度横回転)」「バースピン(ハンドルを回転)」などの技を繰り出す。ハンドルを握って身体を水平に浮かせる「スーパーマン」は滞空時間の長さが自慢だ。空中に飛び出すと、身長165センチ、体重55キロの体が大きく見える。

「自転車に乗っている時間が一番好き。楽しいのでいつまでも乗っていられます。新しい技ができたときのうれしさは格別です」

 屈託のない笑みを浮かべてBMXの魅力を語る。

スポーツに囲まれた幼少時代 祖母は京都サンガのサポーター

3歳から乗り始めたBMX。初めての試合は最下位も、小学校高学年の頃には“無敵キッズ”に成長した。写真は18年4月7日撮影 【写真は共同】

 生まれは02年2月、京都。近所に西京極総合運動公園があり、陸上大会の号砲や野球の応援は家の中にいても聞こえてきた。Jリーグ・京都サンガのサポーターである祖母の影響で小学生の頃にはサッカーも少しやっていた。バスケットボールBリーグ・京都ハンナリーズのアリーナも公園内。最近の成績などが自然と耳に入ってくる環境だ。
 このように、子どもの頃からさまざまなスポーツを身近に感じる場所で育った中村だが、脇目も振らず一貫してのめり込んできたのがBMXだった。

 自らもBMXライダーであり、京都市内でBMXショップを経営する父・辰司さんの影響で、3歳からBMXに乗り始めた。「輪夢」は自転車のパーツである「リム」から付けられた名前だ。
 大会に初めて出たのは5歳のとき。長崎で行われた大会に2歳上の姉と一緒に出場した。

「同じクラスで出たのは姉と僕と、僕と同い年の男の子の3人。その中で3位でした」

 “デビュー戦”こそ最下位だったが、西京極西小に上がった後はどんどん技を身に付け、高学年の頃にはキッズクラスで無敵状態になっていた。小5で初めて出た海外の大会では大人も交えて日本人最高成績。同年代のクラスでは出場した全大会で優勝した。

突然広がった五輪という未来

滞空時間の長さが自慢の技「スーパーマン」を披露する中村 【写真は共同】

 プロ転向を果たしたのは西京極中を卒業した15歳のとき。しかし、「プロになろうと考えて高校を通信制(京都つくば開成高)に決めた時点では、オリンピックの種目になることはまったく知りませんでした」という。
 当初は「X GAMES(米国のケーブルテレビ局ESPNによって開催されるエクストリームスポーツ系の競技大会)」での活躍を目指してプロ転向した中村に、「オリンピック」という思いがけない目標ができたのは17年6月のことだった。国際オリンピック委員会(IOC)が20年東京五輪の正式種目としてBMXフリースタイル・パークの追加を決めたのだ。

「IOCの発表は動画サイトで見ました。いきなりパーンと(追加種目に)入った感じだったので少しビックリしましたが、やっぱりうれしかったです。東京なので、自分が出て頑張りたいという気持ちになりました」

 その後は急激にいろいろなことが変化していった。メディアに出ることが増え、都市型スポーツへの関心の高まりもあってイベントでは引っ張りだこ。サポート体制も徐々に整い、今年6月には企業向けソフトウェアなどを開発・販売するウイングアーク1stと所属契約を結んだ。

1/2ページ

著者プロフィール

北海道生まれ。北海道大卒業後にスポーツニッポン新聞社に入社し、五輪、サッカーなどを担当。06年に退社し、以後フリーランスとして活動。Jリーグ浦和レッズオフィシャルメディア『REDS TOMORROW』編集長を務める。近著に『ザック・ジャパンの流儀』(学研新書)

新着記事

スポーツナビからのお知らせ

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント