連載:未来に輝け! ニッポンのアスリートたち
BMXの16歳・中村輪夢、高まる注目の中で 京都の仲間は「ほっこりする」存在
「自転車に乗っている時間が一番好き」
東京五輪で採用される新種目BMXフリースタイル・パーク。京都出身の16歳、中村輪夢の存在感が増している 【Naoki Gaman】
17年11月に中国・成都で開催された第1回世界選手権では、最年少で決勝に進出して7位入賞。同12月に岡山市で開催された第1回全日本選手権では初代チャンピオンに輝いた。
抜群のスピードを武器に空中を高く舞い上がり、「バックフリップ(後方宙返り)」「テールウィップ(ハンドルを握って車体を360度横回転)」「バースピン(ハンドルを回転)」などの技を繰り出す。ハンドルを握って身体を水平に浮かせる「スーパーマン」は滞空時間の長さが自慢だ。空中に飛び出すと、身長165センチ、体重55キロの体が大きく見える。
「自転車に乗っている時間が一番好き。楽しいのでいつまでも乗っていられます。新しい技ができたときのうれしさは格別です」
屈託のない笑みを浮かべてBMXの魅力を語る。
スポーツに囲まれた幼少時代 祖母は京都サンガのサポーター
3歳から乗り始めたBMX。初めての試合は最下位も、小学校高学年の頃には“無敵キッズ”に成長した。写真は18年4月7日撮影 【写真は共同】
このように、子どもの頃からさまざまなスポーツを身近に感じる場所で育った中村だが、脇目も振らず一貫してのめり込んできたのがBMXだった。
自らもBMXライダーであり、京都市内でBMXショップを経営する父・辰司さんの影響で、3歳からBMXに乗り始めた。「輪夢」は自転車のパーツである「リム」から付けられた名前だ。
大会に初めて出たのは5歳のとき。長崎で行われた大会に2歳上の姉と一緒に出場した。
「同じクラスで出たのは姉と僕と、僕と同い年の男の子の3人。その中で3位でした」
“デビュー戦”こそ最下位だったが、西京極西小に上がった後はどんどん技を身に付け、高学年の頃にはキッズクラスで無敵状態になっていた。小5で初めて出た海外の大会では大人も交えて日本人最高成績。同年代のクラスでは出場した全大会で優勝した。
突然広がった五輪という未来
滞空時間の長さが自慢の技「スーパーマン」を披露する中村 【写真は共同】
当初は「X GAMES(米国のケーブルテレビ局ESPNによって開催されるエクストリームスポーツ系の競技大会)」での活躍を目指してプロ転向した中村に、「オリンピック」という思いがけない目標ができたのは17年6月のことだった。国際オリンピック委員会(IOC)が20年東京五輪の正式種目としてBMXフリースタイル・パークの追加を決めたのだ。
「IOCの発表は動画サイトで見ました。いきなりパーンと(追加種目に)入った感じだったので少しビックリしましたが、やっぱりうれしかったです。東京なので、自分が出て頑張りたいという気持ちになりました」
その後は急激にいろいろなことが変化していった。メディアに出ることが増え、都市型スポーツへの関心の高まりもあってイベントでは引っ張りだこ。サポート体制も徐々に整い、今年6月には企業向けソフトウェアなどを開発・販売するウイングアーク1stと所属契約を結んだ。