東京2020 THE WAY to 2020

山岡泰輔、謙虚に冷静にマウンドへ立つ今
代表は別次元も「いつか選ばれる選手に」

 2020年東京大会そして世界に向けて、それぞれの地元から羽ばたくアスリートを紹介する連載企画「未来に輝け! ニッポンのアスリートたち」。第23回は広島県出身、野球の山岡泰輔(オリックス・バファローズ投手)を紹介する。

“ダルビッシュのツイート”で話題となった高校時代

広島県出身の22歳、山岡泰輔。日々結果が求められるプロ野球の世界で、2年目のシーズンを戦っている
広島県出身の22歳、山岡泰輔。日々結果が求められるプロ野球の世界で、2年目のシーズンを戦っている【写真は共同】

 U−18、U−21と各世代で侍ジャパンを経験してきた22歳の山岡泰輔は人気球団、広島東洋カープのお膝元、広島県で生まれ育った。


「実はカープファンでもなかったし、野球は自分でやるほうが好きで、プロ野球の試合をほとんど見たことがなかったんです。地元・広島を意識して戦った経験といえるのは、甲子園に出たときくらいかな。でも、それも1回ですし……」


 しかし、その1回への道のりと、甲子園での1試合が野球ファンの脳裏に今でも鮮烈な印象を残している。


 球史に残る壮絶な試合となった広島県大会の決勝戦で田口麗斗(巨人)率いる広島新庄高と対戦した瀬戸内高は、延長15回を0対0で引き分け、再試合となった。山岡はこの試合で15イニングスを投げきり、相手打線を1安打15奪三振無失点に抑えている。2日後の試合でも完封勝利を収め、13年の夏、第95回全国高等学校野球選手権への出場権を勝ち取った。


 甲子園では強豪、明徳義塾高と対戦し初戦で敗退したものの、8イニングスを投げ9奪三振、2失点の好投を見せる。この年を含めて過去2度しか甲子園に出場していない瀬戸内高と、山岡の名前は一躍全国区になった。しかし、山岡は苦笑いをする。


「いや、でも僕が注目された理由は、ダルビッシュさんのツイートがあったからじゃないですか。あのことがなかったら、そんなに知名度は上がっていないと思います」


“ダルビッシュさんのツイート”とは当時、山岡のピッチングを動画で見たダルビッシュ有(シカゴ・カブス)が「これは一番だわ」とツイッターでつぶやいたことを指す。その一言が野球ファンの間で瞬く間に共有され、広まった。


「うれしかったですね、単純に。『(自分のピッチングを見て)そう思ってくれたんだ』って思いました。注目されて嫌だったこともなかったし、むしろ、自分が注目されることになったのは、ダルビッシュさんのツイートのおかげだと思っています」

「楽しそうだった」 地元広島の瀬戸内高野球部へ

高校卒業後、社会人野球を経てプロ入りした山岡。ダルビッシュが評価したことでも話題となったが、本人は「甲子園に出られると思っていなかった」と当時を振り返る
高校卒業後、社会人野球を経てプロ入りした山岡。ダルビッシュが評価したことでも話題となったが、本人は「甲子園に出られると思っていなかった」と当時を振り返る【市川忍】

 山岡が謙虚に語るのには理由がある。当時の山岡にとっては、甲子園は夢の舞台だったからだ。


「甲子園に出られると思っていなかったし、そもそも甲子園に行こうと思って瀬戸内高校に行ったんじゃないんです。中学の野球部の先輩が行っていて、練習見学をしたときに、一番やりやすそうだったから。楽しそうだなって思って。強豪校からも誘いは来ましたけど、でも、強いところに行きたいという気持ちはなかったです。強いところに行って甲子園に出られても、自分が試合に出られないのは嫌だったから。甲子園に出られなくてもいいから、全ての試合に投げたかった。だって投げられなかったら野球している意味、なくないですか?」


 山岡にとって、最も重要だったのは「野球の試合に出られて、楽しいかどうか」だった。その結果として出場できたのが甲子園だった。


「今でも野球をするときに楽しさがないとダメですね。プロとしてプレーしている今は野球が“楽しい仕事”になった感覚です」


 そんな山岡の“楽しい”の究極は、自分で思い描いた通りに相手バッターを打ち取れたときだ。そのためには、たとえ年上のキャッチャーにも自分の意見をはっきりと伝える。


「僕、野球については相手が年上だから言いにくいってことはないんです。歳が上だとか下だとか関係ない。勝つためにしかやっていないから。ピッチングの組み立てを考えるのが好きなのも、最初にソフトボールを始めた小学生くらいのころからですね。もちろん、そのころは対戦相手の名前も知らないしデータはなかったけど、バッターボックスに立つ姿やスイングを見て、どう打ち取ろうと考えるのが好きでした。無意識でやってきたことなので、特にきっかけがあったわけでも、『やらなきゃいけない』と思ってやってきたわけでもない。考えるのが楽しいからですね」


 球威のあるストレートや、切れ味鋭いスライダー同様に、高い評価を受けてきた山岡の投球術はこうして幼いころより培われてきたのだろう。

市川忍

フリーランスライター/「Number」(文藝春秋)、「Sportiva」(集英社)などで執筆。プロ野球、男子バレーボールを中心に活動中。

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