鮮明になってきた春3冠の課題点 宝塚の売上前年比90.9%、要因どこに?

安田記念との相関関係

大阪杯を勝ったスワーヴリチャードは同じ中距離路線の宝塚記念ではなく、マイルGIの安田記念を選択した 【スポーツナビ】

 改めて“春3冠”が抱える日程面の問題に戻りますと、この件に大きく関わっていると思われるのが、東京で開催される安田記念の存在です。

 グレード制が敷かれた1984年にGIに格付けされたのは宝塚記念と同じですが、創設は宝塚の1960年より古い1951年。伝統のあるマイル重賞と言えます。6月の上旬に施行されるこのレースを、春に中距離路線を歩もうとする馬が目標にするのは、いたって自然なことのように思えますが、関西で行われる“春3冠”によって、それぞれの位置付が曖昧になってしまいました。

 この問題についても、昨年はキタサンブラックが居たため表面化しませんでしたが、2年目の今年、大阪杯を勝ったスワーヴリチャードが春の天皇賞ではなく、安田記念に回ってきたことで現実のものになりました。

 いろんな事情があるにせよ、スワーヴリチャード陣営は、春3冠馬に与えられる2億円のボーナスチャンスに目もくれなかったことになります。このことのみを取り上げ、2年目のシリーズに早くも暗雲が立ち込めた、などと言っては乱暴になるでしょうか。ちなみに大阪杯2着馬も天皇賞ではなく安田記念に向かいましたが、前年のマイルCSの覇者ですから無理はないのです。

もうひとつの、大きな課題について

 さて、今年になって鮮明になった“春3冠”の課題に触れてきましたが、近年目立ち始めた問題をもうひとつ浮かび上がらせたようにも感じています。

“春3冠”と安田記念、そして海外遠征馬の増加によって、国内で一線級が激突するレースの減少傾向です。それは必ずしもGIに限ったことではありません。

 大阪杯を使った馬が春の天皇賞を使わないで安田記念に向かうのは、距離適性を思えば致し方ない、という立場を取るとして、しかし大阪杯の後、春の天皇賞を使わず、さらに安田記念も見送って、そのうえで宝塚記念にも出走してこない……。

 競走馬にアクシデントはつきもので、それが“たまたま”ならともかく、毎度そのような事態が起きるのだとすれば、根本から調整法を見直す必要がありますが、しかし今の日本のホースマン達の技術で、その部分に問題があるとは到底思えません。では何故、ファンが求める一線級同士が激突するレースが減っているのか、ということです。

 確かにここ数年、売上は微増傾向にありますが、宝塚記念の前年比は90.9%。胡坐をかいているつもりはないにしても、はたして安穏と構えていていいのかどうか。真剣に掘り下げて考察する必要があります。

打開策はどこに?

 この6月25日に、JRAから「競走条件の呼称変更」が発表されました。降級制度が廃止される2019年夏季競馬から、現行の「500万円以下」を「1勝クラス」に、「1000万円以下」を「2勝クラス」に、「1600万円以下」を「3勝クラス」に変更する、と。

 その是非はここではひとまずさておくとして、この手の改革案を決めるのに注ぐ情熱を、“春3冠”と安田記念の在り方、ひいては宝塚記念の日程問題等にも向けることはできないのでしょうか。

 有馬に対抗する形での“上半期最後の大一番”なんてキャッチコピーにこだわらず、より柔軟な発想でもって、例えば日程を繰り上げるとか、ジャパンC並の外国馬の招待勧誘策を展開するとか、いっそファン投票で選出された3歳馬限定で、ボーナスを設けて出走を促すとか……。

 いや、こんなところで一個人がどうこう言っても始まらない。もっと重要な話し合いが行われる場で、“競走条件の呼称変更”も結構ですけれど、こちらの問題も俎上に載せていただければ、と思うばかりです。

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著者プロフィール

中央競馬専門紙・競馬ブック編集部で内勤業務につくかたわら遊軍的に取材現場にも足を運ぶ。週刊競馬ブックを中心に、競馬ブックweb『週刊トレセン通信』、オフィシャルブログ『いろんな話もしよう』にてコラムを執筆中。

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