さらばラ・リーガの偉大なクラックたち ワンクラブマンの時代にも終わりのとき

神戸に加入したイニエスタ、バルサと別れ

カンプ・ノウではイニエスタの盛大な退団セレモニーが行われた 【Getty Images】

 今季のラ・リーガは特別な、そして異例の閉幕を迎えた。数節前にバルセロナの優勝が決まっただけでなく、珍しいことにヨーロッパのカップ戦出場チームも、2部への降格チームも全て確定した状況で迎えた最終節は、該当クラブのみならず、フットボールを愛する全てのファンにとって忘れがたい「別れの日」として記憶に刻まれることになった。

 中でも世界中のフットボールファンにとって最大の出来事は、アンドレス・イニエスタとバルセロナの別れだ。12歳で入団して22年間クラブに所属し、トップチームで過ごした16年間で32個ものタイトルを獲得してきた34歳のベテランは、その模範的な振る舞い(退場処分を受けたことは一度もない)と万人に愛される人柄に加え、優雅で繊細なプレースタイルと卓越したテクニックによって、唯一無二の選手となった。

 自らの意思でバルセロナを去る決断を下したイニエスタは、ヴィッセル神戸でプレーすることになった。彼の代役探しは、バルセロナにとって困難な挑戦となるだろう。ミリ単位の精度が求められるわずかなスペースでもボールを失わず、時間をコントロールしながらプレーを創造できる彼のような選手は、世界中を探し回っても簡単には見つからない。

イニエスタ・ロールを引き継ぐのは?

チームメートたちによる胴上げで送り出されるイニエスタ 【写真:ロイター/アフロ】

 イニエスタの退団を予見していたバルセロナは、1月にフィリペ・コウチーニョを獲得した。遠目からでも難なくシュートを決められる得点力を持った彼はしかし、中盤でプレーを構築する選手というよりは、よりペナルティーエリアに近い位置でゴールを生み出すアタッカーである。

 2015年にカタールへと移籍したシャビ・エルナンデスに続き、イニエスタも失うことになる今後、世界中を魅了したバルセロナのポゼッションスタイルを継承できる中盤の選手はセルヒオ・ブスケッツ以外にいなくなった。

 攻撃陣の破壊力や守備の安定に直結する問題ではないかもしれないが、これまでのようにクリエーティブなプレーを構築することは難しくなるだろう。来季から新キャプテンに就任するリオネル・メッシが中盤にポジションを移し、彼らの役割を引き継ぐことは可能だろうが、それはゴール前で彼の得点力を生かす機会が減少することを意味する。

1/2ページ

著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント