ラ・リーガで「有終の美」を飾るのは? 主要クラブ、それぞれのシーズンを総括

モチベーションを失わなかったアトレティコ

アトレティコはマルセイユを破り、見事EL優勝を成し遂げた 【Getty Images】

 シーズンの終了が迫り、ワールドカップへの期待感が高まり始めた中、スペインの主要クラブは軒並みポジティブな感触とともにオフを迎えようとしている。

 近年、ラ・リーガでタイトル争いを繰り広げてきた3クラブのうち、首都マドリーの2チームはヨーロッパのタイトルを懸けたファイナルにたどり着いた。UEFA(欧州サッカー連盟)のコンペティションでのタイトル獲得は成功と同義だ。勝てば今季を成功のシーズンとして締めくくることができるし、経済的にも大きなプラスを得ることになる。

 レアル・マドリー、バルセロナとアトレティコ・マドリーの間には、今も年間予算で大きな差がある。そのためディエゴ・シメオネ監督は、クラブの目標が2大メガクラブに次ぐ3位の確保であると繰り返し主張してきた。そう考えると、今季最大の挫折はチャンピオンズリーグ(CL)のグループステージでアゼルバイジャンのカラバフ相手に1勝もできず(2戦2分け)、結果としてローマとチェルシーに上位2枠を譲ったことだったと言える。

 それでもアトレティコはモチベーションを見失わないよう今季の目標を再設定し、シメオネの指揮下でさらなるハードワークに従事した結果、見事オリンピック・マルセイユとの決勝を制してクラブ史上3度目のヨーロッパリーグ(EL)制覇を果たした。しかもラ・リーガでは最終節を残してレアル・マドリーを上回る2位につけている。

レアルとバルサは「CL決勝」次第

ジダン監督率いるレアル・マドリーは26日にリバプールとのCL決勝に臨む 【写真:ロイター/アフロ】

 レアル・マドリーの立場は異なる。CLを2連覇中のチームに課せられたハードルは、アトレティコのそれとは比べ物にならないほど高いからだ。しかし、破壊力抜群の攻撃力を持つジネディーヌ・ジダンのチームは、驚くほど早い段階でラ・リーガの優勝争いから手を引いてしまった。さらには国王杯でも格下レガネスに足をすくわれ、主役となることがなかった(準々決勝で敗退)。

 必然的に今季最大の焦点となったCLにおいても、グループステージではトッテナムの後塵(こうじん)を拝して2位通過にとどまっている。決勝トーナメント1回戦でパリ・サンジェルマンを下した時点では復活を印象付けたが、ユベントスとの準々決勝ではファーストレグを3−0で制しながらセカンドレグで予期せぬ大苦戦を強いられた。バイエルン・ミュンヘンとの準決勝も、勝敗を分けたのは相手の致命的ミスを生かした得点と、ケイラー・ナバスの好守、そして相手の決定力不足だった。

 そのような勝ち上がりの末にリバプールとのファイナル(現地時間5月26日)で敗れることになれば、彼らの2017−18シーズンには失敗の烙印(らくいん)が押されることになるだろう。その場合はオフの選手補強にも少なくない影響が出てくるはずだ。それでも優勝さえすれば、1974〜76年のバイエルン以来となるCL3連覇を果たしたシーズンとして、語り継がれることになる。

 バルセロナについては、解釈の仕方が分かれるところだ。ラ・リーガと国王杯の2冠獲得に目を向ければ素晴らしいシーズンだったと言うべきだが、ファーストレグを4−1で勝利しながらローマに逆転を許したCLのショッキングな敗退が影を落とした印象は否めない。

 ファンにとっては、レアル・マドリーがCLで優勝するかどうかによっても、2冠獲得の価値は変わってくる。ライバルがCL3連覇を実現したとなれば、国内の2冠獲得も霞んでしまうことだろう。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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