それぞれの今季を象徴したエル・クラシコ 互いの価値を証明した90分のスペクタクル

2トップにしてから攻撃の迫力を欠くバルセロナ

2−2に終わったエル・クラシコは両チームの今季を象徴する一戦となった 【Getty Images】

 現地時間5月6日にカンプノウで行われたエル・クラシコは2−2の引き分けに終わり、バルセロナとレアル・マドリーの今季を象徴する一戦となった。

 ラ・リーガと国王杯の2冠を獲得したバルセロナは、10人での戦いを強いられたこの試合の後半がそうであったように、今季を通して必要以上に守りに入る傾向があった。レアル・マドリーは、低調な立ち上がりから徐々にエンジンがかかっていったこの日と同じく、今季は序盤戦でつまずきを繰り返しながらも、最終的にはチャンピオンズリーグ(CL)決勝にたどり着いた。

 今季のバルセロナは守備時のバランスが改善された反面、攻撃に関してはレアル・マドリーと比べて迫力に欠ける印象を残した。エルネスト・バルベルデ監督が重用した4人のMFを起用する4−4−2のシステムはその原因の1つだ。

 従来の4−3−3よりFWが1人少ないこのシステムでは、2トップの一角を担うリオネル・メッシも中盤に降りることが多いため、前線でライバルのディフェンスラインに脅威を与える選手がルイス・スアレス1人になってしまう。とはいえ、今回のクラシコでも鮮やかなボレーシュートを決めたスアレスは、今季もメッシとともに多くのゴールを生み出してきた。

2冠を喜びきれないクレ、今季に満足するマドリディスタ

試合後には祝勝セレモニーが行われたが、クレたちは2冠獲得を喜びきれない 【写真:ロイター/アフロ】

 クラシコ後には、バルセロナが前節にアウェーで決めたリーグ優勝を報告する祝勝セレモニーが行われた。だが選手たちがピッチを一周し終わる頃にはすでにスタンドを後にしていたファンも多く、勢いよく打ち上がる花火も、どこか盛り上がりに欠ける雰囲気をごまかす演出のように感じられた。

 クレ(バルセロナのサポーター)たちが2冠獲得を喜びきれないのは、ショッキングな形で敗退したCLでレアル・マドリーが過去5シーズンで4度目の決勝に勝ち進み、3連覇に王手をかけているからだ。逆にマドリディスタ(レアル・マドリーのサポーター)たちはラ・リーガと国王杯のタイトル争いから早々に脱落したにもかかわらず、バルセロナ以上に今季の成績に満足している印象を受ける。

 クラシコでもより自信を感じさせたのはレアル・マドリーの方だった。前半10分と早い段階で先制点を奪われ、14分に同点ゴールを決めたクリスティアーノ・ロナウドは足首を痛めてハーフタイムに交代を余儀なくされた。後半7分にはメッシの勝ち越しゴールが生まれる過程でスアレスのファウルが見逃され、マルセロがジョルディ・アルバに足を蹴られた明らかなPKも無視される誤審の被害も受けたが、それもレアル・マドリーの選手たちは苦としなかった。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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