“新星誕生”につなげた体操の新システム 全日本Vの谷川、世界選手権代表なるか

日本体操協会:遠藤幸一

新星誕生に沸いた全日本選手権

4月の全日本選手権で初優勝した谷川翔(中央)。白井健三(右)、内村航平に勝って全日本王者となった 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 体操の世界選手権(10月、カタール・ドーハ)日本代表決定競技会を兼ねた「第57回NHK杯」が19日からの2日間、東京体育館で開催される。19日に女子、20日に男子の競技が行われる。

 NHK杯の出場権が懸かった4月の全日本選手権。男子は19歳の新星、谷川翔(順天堂大)の初優勝に沸いた。予選トップの白井健三(日本体育大)を逆転し、追い上げる内村航平(リンガーハット)の連覇を阻んでのダークホースの勝利は、多くの人に新しいスター誕生を印象づけた。

 彼の才能と努力が今回の結果につながったのは言うまでもないが、日本体操協会が今シーズンから導入していた新しい取り組みにも注目したい。

 かつて全日本選手権の出場者は、大会の半年以上前となる前年度8月ころのインカレ、9月ころの社会人選手権などの成績により決まっていた。その“タイムラグ”を減らすためにも、2016年は11月の全日本団体選手権時に個人総合トライアウトを開催し、全日本出場者を決める機会をずらした。それでも11月のトライアウトの段階でけがなどにより力が出せなければ、次年度の全日本選手権への出場はかなわず、日本代表になるためにはさらに1年待たなければならなかった。

 しかし、今シーズンは全日本選手権直前の3月に個人総合トライアウトを開催することで、その問題を払拭(ふっしょく)。トライアウト首位の谷川が全日本選手権初優勝につなげ、開催時期変更の取り組みの良い面が出た。

 あとは谷川がNHK杯で日本代表となり、世界で結果を残す成長をみせれば、強化本部の狙い通りの展開となる。

2020代表決定へ向けた危惧

 こうした取り組みの中で危惧もある。それは、東京五輪出場枠を獲得する競技会の分散化の影響である。

 これまでは、五輪前年の世界選手権と、五輪テストイベントの2大会を対象としていた。選手(チーム)はその時期に調子を合わせて出場権獲得を目指せばよかった。しかし、東京五輪の出場権は、18年と19年の世界選手権、今年の暮れから始まる種目別ワールドカップ(18〜20年)、さらに20年の個人総合ワールドカップと大陸選手権など多岐にわたる。

 つまり、東京五輪まで集中しなければならない時期が続き、心身をリフレッシュする機会が少なくなる可能性がある。本当に重要な競技会にピークを合わせることが難しく、最悪の場合、疲労の蓄積によるけがの発生が懸念される。これらをどう解決していくのか、東京五輪まで考えていかなければならないことは、まだまだ多い。

 いずれにしても、NHK杯の結果で今秋の世界選手権日本代表が決まる。層の厚さが東京五輪の好成績につながることは間違いないので、新たな選手が成長した姿をぜひ見ていきたい。
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著者プロフィール

1961年東京生まれ。日本体操協会常務理事・総務委員長。体操の金メダリストである父親を持つものの、小学、中学はサッカーに明け暮れていた。高校で体操に転身。国際ルールのイラストレーターとして世界中の体操関係者にその名を知られている。

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