スケボーの“ベテラン”高2コンビが初V アジア大会金メダルへ、初日本代表が決定
池慧野巨(左)と伊佐風椰がスケートボード初の日本代表として、アジア大会への切符を手にした 【写真:田村翔/アフロスポーツ】
高難度技をつなげた池、女子は僅差の接戦に
17歳にしてキャリアは10年以上。小学5年生でプロ資格を獲得するなど、早くから将来を嘱望されてきた。得意なのは、普段とは逆の足を前にして滑る「スイッチスタンス」や、デッキ(板)の前方を蹴って板を浮き上がらせる「ノーリー」から繰り出す技。ともに通常とは逆の滑り方、浮き上がらせ方になるため、難易度がグンと上がる。この日もこれらの技を次々とつなげ、成功させて見せた。ただし、意識して技を増やしたのではなく、「大会に出てから(友人に言われて)気がついた」と語るほど、ごく自然に繰り出したもの。日本代表の早川大輔コーチは「彼は高得点を出せるトリックしかやっていない。無意識にそれが組めたのであれば、普段から世界レベルを意識して練習をしているということだと思う」と手放しに褒めたたえた。
普段とは逆足の右足を前にして、難度の高い技を次々と繰り出した池 【写真:田村翔/アフロスポーツ】
選手たちには「もう少し自信を持って」
一方で、予選上位者が決勝で力を出し切れず、下位に沈むケースも目立った。日本代表の西川隆監督は「全体的にはここ2年くらいで一気にレベルが上がってきている」としながらも、今大会に限っては「意外とみんなミスが多かった」と総評する。実際、技の失敗で気持ちが切れてしまったように見える選手も散見された。早川コーチは、そこに選手たちの課題があるのだと指摘する。
「最近のコンテストは『勝つにはノーミス』というのが少し前に出過ぎている部分が強くあると思います。だから選手たちも(ミスをすると)一回集中が切れてしまうということがどうしてもある。でも、実際はそんなことはなくて、1回ミスろうが2回ミスろうが、それを帳消しにするぐらいすごく良い技が出せれば勝てるんです。選手たちがもう少し自信を持って自分のトリックを磨けたら、気の迷いもなくなるし『立て直さなきゃ』という焦りもなくなる。気持ちの余裕が生まれて、フィジカルとメンタルの両方が強くなる。それが課題だし、今回選ばれた強化指定選手はその面を鍛えていってあげたいと思います」
日本代表としての経験全てが財産となる
「小さい子たちに比べると大会の数もたくさんこなしている」と伊佐。経験値の差が勝負を決めた 【写真:田村翔/アフロスポーツ】
西川監督は、2020年に向けたアジア大会の位置付けを問われ、こう答えた。8月の本番へ、準備も含めて何もかもが“スケートボード界初”の試みとなる。大会への意気込みを聞かれた池と伊佐が、口をそろえて「全然分からない」と答えるのも当然だ。しかし、だからこそ日の丸を背負って戦い、経験したことのすべてが、今後のスケートボード界にとって貴重な財産となるのではないか。
20日にはパーク種目の日本選手権(新潟)が行われる。同様にアジア大会の日本代表男女各1名と強化指定選手各4名が決まり、日本代表“初代メンバー”の陣容が出そろう。西川監督が掲げるアジア大会の目標は「全部金メダル」。結果はもちろんのこと、未知の世界に踏み込む彼らが日の丸の重みをどう感じ、何を経験して、どう成長していくのか。その姿を追いかけていくことも、スケートボードの今後の楽しみとなりそうだ。
(取材・文:小野寺彩乃/スポーツナビ)
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