古川孝敏が体現するキングスイズム CS勝ち上がりの鍵は“スリー&ディー”
3ポイントシュートと守備が生命線
【(C)B.LEAGUE】
また攻撃ではコートの左右で連続的に展開されるピック&ロールを多用。34.1%もの攻撃が直接ピック&ロールまたはそこから1回以内のパスで展開して生まれている。リーグで琉球よりもピック&ロールを数多く仕掛けたチームはA東京しかいない。速攻を仕掛ける頻度はリーグ4位タイで少ないことを考えると、セットプレーで行なうピック&ロールの精度が強豪ひしめくチャンピオンシップ(CS)ではますます問われることになるだろう。
ハーフコートで数的優位を作り、効果的にノーマークを作ることを期待されるピック&ロールだが、他のCS進出チームと比べると決してサイズに恵まれているとは言えない琉球はペイントエリア内の得点がCS進出チーム中最小となってしまっている。アイラ・ブラウン、ハッサン・マーティン、ヒルトン・アームストロングといった運動能力あふれるインサイド陣が見せるダンクはあまりにも無慈悲で熾烈極まりないが、チームの特徴はむしろ外郭に現れる。
琉球は名古屋Dに続いて2番目に多く3ポイントシュートを放ってきた。ディフェンスを「ずらす」ことで機会が生まれる、ボールを受け取ってそのままリングに向けて放つ「キャッチ&シュート」の頻度も名古屋に次いで高い。外郭の決定力に左右される側面は確かにあるが、決まればサイズで劣る部分を補ってあまりある長距離砲と、揺るがないディフェンスのプレッシャーが彼らの生命線となる。
初代MVPの古川が鍵を握る
相手にピック&ロールを決して2対2では守らせない、ディフェンスを外に引き出す「引力」こそが筋肉増強剤のように効果を発揮するのだが、古川の「引力」は昨シーズンのファイナルでも如実に現れており、最初にトランジション(攻守の切り替え)から3ポイントシュートを決めた時点で「今日はのれる」と本人も確信したことだろう。
開幕こそけがで11試合に欠場し出遅れた古川だが、3月17日以降は安定してスターターに定着。一流のシューターの証である味方のスクリーンを活用してシュートに持ち込んだ頻度26.9%は、100回以上このタイプのシュートを放ってきた選手のうちシーホース三河の金丸晃輔にしか引けを取らない。さらに自身のシュートの22.5%を占めるのが外郭での「待ち撃ち」シュート。古川自身が放つシュートの49.4%が「引力」の効果を伴うタイプのシュートである。
さらに自らの成長を求めた日本代表シューターは、新天地でピック&ロールを扱うことにもチャレンジしている。昨季は自身のプレーのわずか10.4%の頻度でしかなかったピック&ロールから自ら持ち込んでのシュートは、今季22.3%と3番目のオプションになっている。その得点効率も昨季とは比較にならないような上昇を見せており、新たな武器がCSでライバルたちを驚かせる可能性もある。
身を粉にしてチームを鼓舞する闘将。胸の奥深くからの咆哮(ほうこう)とともに3ポイントシュートが火を噴くのか。キングスバスケットボール“スリー&ディー”の体現者に注目だ。
※データはすべて第27節終了時点のものです。
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