3ポイントが打てるPF・張本天傑 名古屋Dが有する特異なアドバンテージ

佐々木クリス

3ポイントシュートが相乗効果をもたらす

【(C)B.LEAGUE】

 今季最後まで残されたチャンピオンシップ(CS)の1枠。拮抗した中地区2位争いを勝ち上がってきたのはCS出場8チーム中、千葉ジェッツに次いで最も40分間の攻守の切り替え、ペースが速い名古屋ダイヤモンドドルフィンズだ。

 どんな相手にも臆することなく向かっていくチームは、Bリーグ全体でも、CS進出チーム同士のデータを洗い出しても最も多く3ポイントシュートを放っており、攻撃機会の多さをバスケットボールにおける長距離砲を放つ回数に直結させている。

 名前の通り、大海原を悠々自適に泳ぎ回るかのようなコート上での躍動感。名古屋の面々が持ち合わせる走力と運動能力の高さはまさに、水中を左に右に旋回するイルカの大泳団を思わせる。

 PGに笹山貴哉、スターティング・センターは昨季オールスター選出のジャスティン・バーレルとチームとしての軸がしっかりしている。その上、彼らを唯一無二の存在にしているのが長距離シュートの決定力を有する選手たちの豊富さだろう。

 チームには笹山、中東泰斗、安藤周人、張本天傑、クレイグ・ブラッキンズ、ジェロウム・ティルマンという6人もの1試合あたり2.5本以上3ポイントシュートを放ってくる選手が在籍する。そればかりか3本以上に区切っても笹山、安藤、ブラッキンズ、ティルマンの4人が平均を上回る数を放っており、これだけの人数がそろうチームはCS進出8チーム中、他にはない。

 しかもポジション別に並び替えると面白いことに、油断をすればPGからCまで全てのポジションが該当する全方位、全ポジションからネットを揺らしてくるのだ。

 2ポイントよりも1.5倍の価値がある3ポイントを多用することでリーグ7位の得点効率をシーズン中に残してきた彼らだが、シュート力が生み出すコート上の空間の広さはバーレルのポストアップや、笹山とブラッキンズが織り成すピック&ポップのコンビネーションまで、攻撃のありとあらゆるオプションに相乗効果をもたらす。ディフェンスは移動させられる距離が長ければ長いほど不利なのだから、想像していただければ分かるだろう。

「特異」なPF、張本天傑

 昨シーズン、Bリーグ初代王者を決めるCSにおいてもう1つ無視できないデータがあった。それはCS進出8チーム中7チームに帰化選手、もしくは200センチ級の日本人選手が在籍していたということ。今季は実に8チーム全てに在籍する事実を鑑みても、リーグ戦を制す大きな要因であることに疑念はないだろう。

 そんな中で全ポジションから3ポイントシュートを放てる名古屋が有するアドバンテージは、日本代表PFの張本だ。第30節終了時点で今季、55本以上の3ポイントシュートを成功させ、かつ先発SG/SFレベルともいえる成功率36.9%を超えていた197センチ(=張本の身長)以上の選手は他に千葉の小野龍猛だけ。小野はジェッツ在籍5年目にして大部分をSFでプレーしていることからも、張本のPFとしての特異性がうかがえる。

 リングに向かうアグレッシブなドライブも魅力な張本は、30分の出場換算で3.7本(31節終了時点)ものフリースローを獲得することにも成功。ここでも他の日本人PFたちを寄せ付けない。彼のポテンシャルが爆発することがCSでも大きな鍵になるだろう。

 ハイペースな展開に、長距離砲の雨あられ。さしずめ夜空のダイヤモンド流星群か。彼らの水中遊泳ゲームに付き合うと、酸欠になって溺れ、海の藻くずと化すに違いない。

※注釈のないデータはすべて第27節終了時点のものです。
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