柔道無差別級に挑んだ高藤と橋本 悔しい初戦敗退も、生まれた新たな目標

長谷川亮

注目を集めた2人の小兵

無差別級となる全日本選手権に挑戦した橋本壮市(左)と高藤直寿 【写真は共同】

 体重無差別で男子柔道日本一を決する全日本柔道選手権が29日、日本武道館で開催された。

 今大会には日本全国10地区(北海道・東北・関東・東京・北信越・東海・近畿・中国・四国・九州)を勝ち抜いた40選手と推薦による3選手を加えた43人が出場。柔道日本一の座を目指し戦いを繰り広げた。

 推薦で出場したのは昨年の大会覇者である王子谷剛志(旭化成)、昨年の世界選手権王者である橋本壮市(73キロ級/パーク24)と高藤直寿(60キロ級/パーク24)の3選手。100キロ超、最重量では150キロ(上川大樹/京葉ガス)といった選手も見られる中で小兵の2人が“小よく大を制す”柔道の精神を体現できるか注目を集めた。

 1回戦をシードとなった2人は、まず橋本が先に2回戦に登場。過去全日本選手権で3位の実績を持ち、昨年は小川雄勢(東京/明治大)を破っている垣田恭平(九州/旭化成)と対戦した。

 174センチ、95キロの垣田に対し、170センチ、73キロ(※この日は78キロぐらいと試合後に本人談)の橋本は足さばきを駆使して正面で組み合わない。そこから巴投げなど速い仕掛けで攻めて垣田を後手にし、審判は垣田に指導を与える。

 しかし、組み手争いこそスピードを発揮した橋本だが、そこから有効以上のポイントを上げるには至らず、次第に垣田がパワーと圧力をきかせてくる。

準決勝を目指していたが……

準決勝を目指していた橋本だが、延長戦の末に初戦となる2回戦で敗退した 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 延長戦に入り一本背負いを仕掛けた橋本だが投げるには至らず、スタミナ十分の垣田はさらに前へ出てくる。橋本は正面で組まないようにしたものの、そこから技に入るため仕掛けが不十分となり、逆に垣田の内股に浮かされ、あわやの場面を作られる。

 守勢に回った橋本は技が出なくなり、指導が重なり反則負け(7分08秒)。3回戦へ進むことはできなかった。

「思っていたより全然悔しい」

“負けてやむなし”と取られる今回の挑戦であったが、橋本は結果をよしとはしない。

「せっかく出るので逃げていてもしょうがないし、最初から最後まで攻めようと思っていました。でも途中から技の出が遅くなったり、最後は少し(ペースが)落ちてしまった」

 73キロ級で世界を制した技と戦略を総動員して勝ち上がるすべを用意したが、思った通りに運ぶことはできず。

「準決勝ぐらいまでいくつもりだったけどうまくいかなかった。力不足です。技の威力や戦術面をもっと磨かないと」

 73キロ級においてはほぼ見られない初戦敗退となってしまった橋本だが、さらに自身を向上させる必要性を感じ、9月にアゼルバイジャンで行われる世界選手権へ向け「2連覇に向け頑張っていきたい」と気を引き締めていた。

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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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