“柔道日本一”王子谷剛志を強くする原動力 五輪への思い、仲間の存在
全日本2連覇、初の世界選手権代表に
「今日は必死に戦い過ぎて優勝が決まってからは、ほっとしたというか……落ち着きました。ただ、今日の勝ちで次の目標が見えてきたので、頑張っていきたいです」
王子谷はこれで、昨年11月の講道館杯全日本体重別選手権から、12月のグランドスラム(GS)東京、今年2月のGSパリ、4月の全日本選抜体重別選手権と出場した5大会で優勝。とにかく貪欲に勝利にこだわり、結果を出した。
逃したリオ五輪代表、重ねた努力
柔道全日本選手権 優勝を果たした王子谷剛志(左)をねぎらう大野将平=日本武道館 【共同】
昨年の同大会は、8月のリオ五輪最終選考会を兼ねていたものの、大会前には代表候補は七戸龍(九州電力)と原沢久喜(日本中央競馬会)に絞られていた。国際大会での実績が響いていた。「ここで負けたら、もう東京五輪も代表争いに入るのは難しくなる」と背水の陣の心持ちで挑み優勝。目前のリオ五輪代表はならなかったが、意地を見せた。
リオ五輪後の講道館杯でも優勝を飾ったが、「引く力が弱い」と弱点を冷静に分析。専門家を頼り、60キロが限界だったダンベルを90キロまで引けるようになったり、3回しか上がらなかった懸垂も10回近くできるようになったりするなど、筋力強化に取り組んだ。さらに試合中、苦手な相手が来た時の『対応力』を身につけるために、これまでほとんどを決まった相手と行っていた実戦形式の乱取り稽古で、苦手としている左組みの選手や、これまでやってこなかった相手と積極的に組んできた。
井上康生監督「どの選手と当たっても対応できる」
柔道の全日本選手権を終え、強化委員会に臨む男子日本代表の井上康生監督(左端)ら=東京・日本武道館(代表撮影) 【共同】
大会後、日本男子代表の井上康生監督は「今日の試合は確実に勝利しているように見えた。どの選手と当たっても対応できる力を感じました」と評価。さらに金野潤強化委員長も「自分自身を理解していて、戦略も良かった」と話した。
1年前の悔しさは“力”へと変わっていた。