ラグビー女子7人制代表、全敗に危機感 「言葉に質が追いついていない」

斉藤健仁

勝利なしで大会終了「危機感はあります」

鋭いランでトライを奪ったライチェル海遙 【斉藤健仁】

 2日目、アタックラインの幅を狭めて、最初の2分間でボールを継続することを意識して戦った。ただ9位〜12位決定トーナメントの初戦はアメリカに再び14対34で敗れ、この大会で調子を落としていた総合3位のカナダには序盤で14対0とリードしたが14対33と逆転負けし、0勝5敗と勝ち星を挙げられず12位で大会を終えた。

 サクラセブンズは、10代の若手が成長してきているが、残念ながら印象としては10位で終わったリオ五輪時とさほど変わっていない。世界は時にはキックも交えつつラックを作らないでつなぐラグビーが主流の中、日本はハーフブレイクとボール継続にこだわるラグビーをしているため、どうしてもラックが多くなり、ターンオーバーされる回数が増えていた。そこに関して聞くと、中村キャプテンは「接点は逃げては通れないので、ハーフブレイクしてから次のフェイズでつなぎたい」とキッパリと言った。

 稲田HCも「自分たちもかなり成長できているかなという実感はあった」と前置きして、こう語った。「スペインや中国の方が現状は上回っているので危機感はあります。ただ明日いきなり強くなるのは難しいので、フィジカル部分を含めてラグビーのひとつひとつのパートを、他を上回るスピードで成長させないといけない」

中村キャプテン「アタックの成長が世界は早い」

厳しい状態でも、中村キャプテンは前向きな言葉を語る 【斉藤健仁】

 中村キャプテンはリオ五輪時と比べて「世界のセブンズはアタッキングチームが増えていますし、スピーディーになっていますし、アタックの成長が世界は早い。だからアタックの質を上げることが世界のラグビーに追いつくことになると思います。また日本はキャラクターが確立できていないことが世界と肩を並べられない原因のひとつかなと思います。(招待チームながらベスト8に入った)中国が日本のやりたいことをやっていた。日本はテーマを掲げてやっていますが、言葉に質が追いついていないので質を高めていきたい」と冷静に分析した。

 サクラセブンズはWS3大会を終えて、総勝ち点4はコアチームの中で最下位で、総勝ち点15のフィジーとアイルランドを追う。WSは残り2大会しか残っていないことを考慮するとコアチーム降格を避けるためには5月12、13日にカナダで行われるWSでは上位進出は必須となってくる。

「WSで戦い続けることは東京五輪に向けて大事。コンスタントにベスト8に入らないと(世界の強豪と対等に)戦えない」という中村キャプテンも「中国やフィジーがカップトーナメントに進出したので、(カナダ大会の)プールの組み合わせは読めない部分もありますが、1日目に勝ち切ればチャンスはある」と強気の姿勢を貫いた。

「メンバー選考も含めてすべて見直す必要がある」

コアチーム残留に向けて、厳しい戦いが続く 【斉藤健仁】

 7月にセブンズのワールドカップ、8月にアジア大会を控えているが、サクラセブンズはコアチーム残留が何よりも最優先である。ただあと2年に迫った2020年東京五輪でメダル獲得を本気で狙うのであれば、稲田HCが「実際に練習が試合につながっているか、今やっているプログラムやメンバー選考も含めてすべて見直す必要がある」と反省したように、メンバー選考の基準、目指しているラグビー、そして練習の方法など大きく変えなければいけないタイミングにきているのかもしれない。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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