バルサが迎える味気ないシーズン終盤戦 国内2冠が目前でも立ち込める危機感

今回ばかりはメッシも救世主になれず

バルセロナは、ローマのエースであるジェコを止めることができなかった 【Getty Images】

 だが、全てはローマのエスタディオ・オリンピコにて、思いもよらぬ形で崩れ去った。カンプノウでのファーストレグではプレー内容で確固たる差を示し、逃げ切りを図るのに十分なアドバンテージを手にしている。しかし、だからこそ選手たちはどう転んでも問題なく勝ち抜けられるという意識を持って、セカンドレグを迎えてしまった。

 眠ったまま試合に入り、エディン・ジェコに対する警戒を怠った結果、バルセロナは自陣深くに押し込まれ続ける苦しい展開を強いられた。それでも、どこかで前線に残したメッシが状況を一変させてくれることを期待していたのだが、今回ばかりはメッシも救世主にはなれなかった。

 相手を押し込み、猛攻を仕掛けなければ敗退してしまう。そう気付いたのは3失点目を喫した後のことで、すでにチームは負のスパイラルにはまっており、リアクションを起こす時間もほとんど残っていなかった。

バルサの未来はどっちだ?

国内2冠を達成しても、バルベルデ監督の立場は安泰とは言えないかもしれない 【Getty Images】

 バルセロナは近い将来、過去の美しいプレーを取り戻すことができるだろうか。そのためには、4−3−3のシステムがチームのアイデンティティーであること、近年の成功は全て「美しく勝つ」というフィロソフィーの下で手にしてきたものであることに、今一度エルネスト・バルベルデ監督は気付く必要がある。世界最高のプレーヤーに加え、イニエスタのような唯一無二のタレントを擁しながら、3年連続でヨーロッパのタイトルを逃しているのも偶然ではないのである。

 思いもよらなかったCL準々決勝での敗退に加え、今季も4強入りを果たしたレアル・マドリーが3シーズン連続かつここ5年間で4回目、通算13回目のビッグイヤー獲得へと近づいていることで、バルセロナはさらなる危機感に覆われつつある。ローマ戦後には、メッシとピケが消極的すぎたバルベルデの戦略に疑問を投げかけたとのうわさも生じたが、今後はそれも些細(ささい)なことに感じるようになるだろう。

 これでラ・リーガと国王杯の2冠獲得も大きな意味を持たなくなるようであれば、バルセロナは来季に向けて、多くのことを考え直さなければならない。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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