【台湾プロ野球だより】味全がFAで大型補強 台鋼は吉田一将・モヤと契約延長

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中信兄弟からFA宣言し、味全ドラゴンズと10年総額、台湾元1億3000万元(日本円約6億1890万円)の大型契約を結んだ陳子豪(左) 【©CPBL】

 今回は、ストーブリーグや、日台の交流試合に関する話題をお届けしよう。

FA戦線は、貧打に泣いた味全が積極補強、注目集まる陳傑憲(統一)の契約 

 このオフ、台湾プロ野球では4人の選手が国内FA権を行使した。結果、過去2回のHR王に輝いたプレミア12代表の朱育賢(楽天モンキーズ)と、通算131HRの陳子豪(中信兄弟)という、リーグを代表する左の大砲2人の味全ドラゴンズ移籍が決定した。朱育賢は、プレミア12決勝ではファーストで出場、9回裏一死、栗原陵矢(福岡ソフトバンク)の強烈なライナーをキャッチすると、そのままファーストを踏み、ダブルプレーを完成させた選手である。

 味全は、2024年シーズン、リーグ5位の12HR、同9位の打率.295をマークした33歳の朱育賢と、4年総額台湾元4800万元(日本円約2億2850万円)、リーグ3位の17HRをマークした29歳の陳子豪と、10年総額1億3000万元(日本円約6億1890万円)の大型契約を締結した。2019年に「第5の球団」として20年ぶりに台湾プロ野球に復帰した味全は、一軍再参入3年目となった2023年シーズンは優勝も、昨季は貧打に泣いて年間4位に沈んだ。2人の昨季の合計本塁打数29本は、実にチーム本塁打数58本の半分。プレミア12代表の吉力吉撈・鞏冠(ギリギラウ・コンクアン)、若き4番、劉基鴻という2人の右の大砲とのカルテットは、リーグに旋風を巻き起こしそうだ。

 陳子豪といえば、日本で、中信兄弟のチアリーダー「Passion Sisters」の峮峮(チュンチュン)のブレイクにもつながった「炸裂!」から始まる応援歌がおなじみだ。台湾プロ野球では選手の移籍と共に、応援歌がそのまま使われるケースも多々あるが、中信兄弟球団は、陳子豪の移籍決定後、今後も主催ゲームで同楽曲の使用を続ける方針を示唆、陳子豪自身も12月31日、自身のSNSに「踊るなら早く、もう僕の応援歌ではなくなるよ」と書き込んだ。

 このほか、このオフのFA組ではないが、プレミア12で大会MVPを獲得する大活躍をみせた統一ライオンズの陳傑憲は2024年末、3年契約の3年目を終えた。プレミア12でのパフォーマンスで日米球界からも注目され、本人も具体的なオファーがあれば海外挑戦への意欲はあると伝えられているうえ、順調にいけば2026年にもFA権取得となる。統一球団にとって、戦力面、興行面の両面でより欠かせぬ存在となった陳傑憲。大型契約を提示し、「生涯統一」宣言をとりつけたいところだろう。

台鋼は日本に縁ある助っ人陣 富邦の林威助・副GMは日本人指導者招聘でファーム強化目指す

 各球団、外国人選手との契約が進んでいる。このうち、台鋼ホークスは11月7日、小野寺賢人、吉田一将両投手との契約延長を発表。2023年秋、アジアウインターリーグに、「テスト外国人」として参加、優勝に貢献し契約を勝ち取ったBCリーグ埼玉武蔵出身の小野寺は、肘の怪我で離脱も、そこまで一軍9試合に先発、2勝4敗ながら、6試合連続のクオリティースタートをみせ防御率2.31、WHIP0.97という安定した内容をみせた。また、オイシックス新潟から8月に入団した元オリックスの吉田一将は救援投手として15試合に登板。15回2/3で自責点1、防御率0.57、WHIP0.89と圧巻の内容、ファンからは「台鋼のダルビッシュ」と呼ばれた。

 台鋼はさらに12月7日、30HR、99打点でリーグ二冠王に輝いた「魔鷹」ことスティーブン・モヤと57万5000米ドル(日本円約9000万円)で、さらに24日には、6月に一軍昇格後、13試合先発で7勝0敗、防御率2.04と先発陣の軸として活躍した「後勁」こと、ブレイディン・ヘーゲンズと39万2500米ドル(同6100万円)で契約延長したことを発表した。12月27日に獲得を発表した元メジャーリーガー、スペンサー・ワトキンス以外は、皆、日本球界でプレー経験のある外国人選手だ。
 
 NPBでプレー経験がある新外国人選手獲得の情報も入ってきている。エース古林睿煬がポスティング申請、日本ハムへ移籍した統一は、その譲渡金で積極的に補強を行っており、元読売ジャイアンツの左腕、ヨアンダー・メンデスを獲得。また、1月7日には、蘇泰安GMが、NPB2球団で7年間プレーしたC.C.メルセデスとの契約も明らかにした。
 
 現在、台湾プロ野球では全6球団に日本人指導者が在籍している。まだ、一部のチームでコーチ陣の顔ぶれは正式発表されていないものの、富邦ガーディアンズ以外は日本人指導者に大きな入れ替えはなさそうだ。その富邦は12月22日、3人の外国人コーチ就任を発表。このうち、後藤光尊氏が二軍監督兼野手総合守備コーチに、島崎毅氏が二軍投手コーチに就任することが明らかになった。富邦はこれに先駆け10月21日、中信兄弟で現役引退後、二軍監督を3年務め、その後、一軍監督としてチームを二連覇に導いた林威助氏を副GM兼ファームディレクターに招聘しており、今回の人事も、林威助・副GMの人脈によるものと報じられている。

 千葉県内の施設で既に両コーチと面会をすませた林威助・副GMは帰国後、「良いチームを作るためには、ファーム全体のレベルを上げ、チーム内に競争を生み出さなければならない。経験豊かな両氏はファームの底上げに最適だ」とオファー理由を説明、期待を示した。中信兄弟の一軍監督時代、現・監督の平野恵一氏を打撃兼内野統括コーチに招聘、若手を抜擢し、チーム内に競争原理を植え付けることで二連覇を達成した。2016年オフに前身の義大ライノスを買収以来、まだ一度も一軍優勝がない富邦だが、若手の育成力に定評がある林威助・副GM、そして新任の日本人指導者により、まずファームからどのような変化が生まれるのかに注目だ。

写真2:台鋼ホークスは2024年シーズン、30HR、99打点で二冠王に輝いた「魔鷹」ことスティーブン・モヤと、57万5000米ドル(日本円約9000万円)で契約を延長した 【©CPBL】

3/1、2に台北ドームで日本ハムとCPBL2球団が対戦、記者会見には清宮選手も登場 

 日本プロ野球と台湾プロ野球、双方の球団による交流戦の予定も続々と発表されている。楽天モンキーズは2月15日、16日と、千葉ロッテマリーンズのキャンプ地、沖縄県石垣市の石垣市営球場で、恒例の交流試合「アジアゲートウェイ交流戦 Power Series」を開催する。選手やチアリーダーとの距離の近さも好評で、毎年、日台双方のファンの交流の場ともなってきた。近年は双方、若手選手が起用されていたが、今年は久しぶりに一軍メンバー主体での戦いになるという。

 また、3月1日と2日には、北海道日本ハムファイターズが、台湾北部、台北市の台北ドームで台湾プロ野球2球団との交流試合「2025台湾シリーズ」を行い、それぞれ3月1日に統一セブンイレブンライオンズ、2日に平野恵一監督が率いる中信兄弟と対戦する。折しも台湾側の2チームは、2024年シーズンの台湾シリーズ出場チーム。優勝したプレミア12でも、統一は大会MVP、キャプテンの陳傑憲をはじめ5選手、中信兄弟も、正ショートの江坤宇ら5選手が代表に選出された。双方の一軍メンバーによるレベルの高い戦いが期待される。

 日本ハムもこの交流試合を重視しており、古林睿煬を3月1日、古巣の統一戦に、そして3月2日の中信兄弟戦に孫易磊と、二人の台湾人投手を凱旋登板、しかも先発で起用する事を発表したほか、伊藤大海、山﨑福也、万波中正、清宮幸太郎、レイエスなど、各主力選手が軒並み出場予定であることも明らかにされた。コラボグッズの予約販売も既にスタートし、大きな話題となっている。チケットは、日本からも購入可能だ。
 
 12月16日、台北市内で開催された記者会見には、中信兄弟からは2023年WBC代表の王威晨、統一からはプレミア12代表の林安可が、そして、日本ハムからは清宮幸太郎選手とファイターズガール2名も参加した。少年野球熱の高い台湾では、世界一に輝いたリトルリーグ時代から「清宮幸太郎」の名は知られており、プレミア12でも、表彰式後に一人グラウンドに残り、2023年の秋季キャンプで指導を仰いだ高国輝打撃コーチ(富邦)に挨拶したシーンは、素晴らしいスポーツマンシップだとして、台湾各メディアで取り上げられた。

 ステージでは台湾の両選手に向け、「放馬過來(台湾華語で『かかってこいよ』の意)」と「挑発」するパフォーマンスで盛り上げた清宮選手は、台湾メディアに囲まれたぶら下がり取材でも物怖じせず、高い“コミュ力”を発揮。自ら台湾に関するさまざまな思い出やエピソードを明かし、しっかり「大使」役を務めた。翌17日には孫易磊と共に、台北市内にある孫の母校、台北市東園小学校と台北日本人学校を訪問、子どもたちへ指導を行った。

 記者会見の模様や、台湾グルメや文化に触れた街歩きなど、清宮選手の「台湾旅」の模様は、ファイターズ公式動画配信サービス『ファイターズMIRU』で楽しむことができる。また、日本ハムの台湾向けフェイスブックファンページでは、この交流試合に合わせ、主力選手による台湾華語での自己紹介やQ&A、ファイターズガールによる「星期五晩上(Friday Night)」のスクワットダンス動画など、台湾向けの独自コンテンツも準備された。

 このほか、日本ハムは春季キャンプ期間の2月24日、タピックスタジアム名護で味全ドラゴンズとの練習試合を行う。味全の丁仲緯GMは、同時期に開催されるWBC予選に出場する選手以外、基本的に一軍メンバーで臨むと話しており、プレミア12代表の参加も期待できそうだ。ファイターズファンの皆さんには是非、この春、台湾プロ野球3球団との対戦を楽しんでもらいたい。

 パ・リーグの球団には、昨年のドラフト会議での指名の2選手、そして日本ハム入りの古林睿煬含め外国人枠で新たに4選手が入団、パ・リーグの台湾人選手は一挙に6人増えて合計9選手となった。台湾選手の増加により、台湾人ファンのパ・リーグ、NPBへの関心が更に高まることはもちろん、日本球界も、台湾市場をより重視するようになり、双方の交流はますます盛んになるだろう。
   
 日台のプロ野球は昨年2024年、いずれも過去最多の観客動員数を記録した。そして、来年2026年にはWBCが開催される。台湾はこの2月末に開催される予選を、まず突破しなければならないが、本戦での好成績に向け、両リーグにとって、今年がさらなる飛躍のための一年となることを期待したい。

文・駒田英(情報は1月19日時点のもの)
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