ボクシング五輪金を狙う千葉出身・堤駿斗 世界を制するための「練習の三本柱」

善理俊哉

千葉・習志野高出身で、五輪金メダルを目指す堤駿斗(右) 【善理俊哉】

 2020年東京五輪そして世界に向けて、それぞれの地元から羽ばたくアスリートを紹介する連載企画「未来に輝け!ニッポンのアスリートたち」。第15回は千葉出身、ボクシングの堤駿斗(習志野高卒、東洋大)を紹介する。

格言どおりのボクシングで世界一に

16年にロシア・サンクトペテルブルクで行われた世界ユースのフライ級で優勝。以降は海外の専門家も東京五輪のメダリスト候補に挙げている 【(C)AIBA】

 2020年東京大会を含めた将来の五輪メダリスト候補として、日本ボクシング界が特に期待している1人が、全階級で最年少の全日本王者、堤駿斗(男子バンタム級)だ。地元、千葉で「ジム・部活・自宅」を軸に成長し、日本史上初の世界ユース選手権優勝に輝き、今月から、東洋大入学を控えて上京している。

 堤の通った習志野高には、かつて高校ボクシングの全国大会である選抜、総体(インターハイ)、国体の3つを、初めて2年連続で制した「高校6冠王」の粟生隆寛(帝拳)もいた。しかし、粟生の時代(2000年前後)から、その後、新たに天才高校生と言われた井上尚弥(相模原青陵高卒、大橋)の世代を含め、日本は国際舞台での実績を残せていなかった。そもそも、高校入学後にボクシングを始めるのが常識的だった日本において、ジュニア(15歳・16歳)やユース(17歳・18歳)で強豪国とわたり合うことは論外に等しく、そのノウハウもなかった。

 そこに近年、誰より大きな風穴を開けたのが堤だ。16年の世界ユース選手権(ロシア・サンクトペテルブルク)では、抜群の左ジャブを駆使して優勝。ボクシング界の格言である「左を制す者は世界を制す」を体現させた。

 ジャブの完成度は強豪国のエリートたちのみならず、スパーリングで手合わせをしたプロの王者クラスも「見えない」と舌を巻くほどだ。

 堤の活動を管理してきた父の直樹さんは言う。
「駿斗のジャブは小5から通った自宅近くにある本多ボクシングジムの渡部浩太郎トレーナーの理論に基づいています。全国大会で2回目に優勝したとき、渡部トレーナーに『そろそろ研究されそうですね』と言ったら『対策して攻略されるものじゃありません』と断言されたんです。裏をかかれても、その裏に別のパターンが10近くある。イタチごっこでも勝てるし、そもそも完成度が違うと」

 基本的にその理論は門外不出の秘密だが、堤自身が以前に少し口にしたことがある。
「大体の選手はジャブにも“打つ”意識があると思うんですけど、自分の場合は極限まで力を抜いて、今だと思った瞬間にすっと“出す意識”です。その前に相手にかけていくフェイントは相手のレベルが上がるほど“微弱”にするほうが、かかりやすくなるんです」

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著者プロフィール

1981年埼玉県生まれ。中央大学在学中からライター活動始め、 ボクシングを中心に格闘技全般、五輪スポーツのほかに、海外渡航を生かした外国文化などを主に執筆。井上尚弥と父・真吾氏の自伝『真っすぐに生きる。』(扶桑社)を企画・構成。過去の連載には『GONG格闘技』(イースト・プレス社)での『村田諒太、黄金の問題児』などがある

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