バド渡辺勇大を成長させた“2万回” 中学までは無名も、全英OP制覇

楊順行

中学までは無名 強くなるために始めた事

混合ダブルスで組む東野(手前)は、高校の先輩。息の合ったプレーを見せる 【写真:ロイター/アフロ】

 サウスポーからの多彩なショット、速いタッチ、類いまれなディフェンス力、そして豊富な運動量が武器の渡辺だが、富岡第一中までは全国タイトルとは無縁だった。東京・杉並区生まれ。過去に米倉加奈子、佐藤翔治と2人のオリンピアンを生んでいる名門・小平ジュニアでは、
「同じチームにいたライバル(小倉由嵩・現日本大)に、ずっと勝てませんでした。でもそこで、チャレンジする力が身についたと思うし、ライバルがいたからこそ強くなれた」と渡辺は振り返る。
 東京の親元を離れた中学時代も、なかなか結果は出ない。ただ、強くなるための伏線として面白いエピソードがある。生活していた寮のげた箱に『靴をそろえる』という貼り紙があった。渡辺は、どうせやるならとことんやろうと、トイレのスリッパまでをすべてきちんと並べるようにした。1カ月続けると、それが当たり前の習慣になる。だから、と渡辺はいう。

「“人間は2万回同じことを繰り返せば必ず覚える”というのをなにかの本で読んだのですが、バドミントンでもそうだと思う。だから僕は、正解だと思うことをとことんやり抜けるんだと思います」

2種目でのメダルを目指して「2倍、3倍の努力を」

 中学までの“2万回”が花開いたのが、15年の高校選抜単複、インターハイ単複制覇というわけだ。社会人では、167センチという小柄さとパワー不足を自覚し、ダブルスに専念。世界ランキングはMDが31位、XDが26位(3月22日現在)で、2020年の東京五輪では、2種目出場も夢じゃない。メダル獲得には1種目に絞るべき、という声もあるが、
「そういう選択肢は、僕にはありません。難しいというなら2倍、3倍の努力をすればいいし、それが当たり前だと思ってやっています。全英の優勝で期待されるのはありがたいし、そのプレッシャーを自分のなかで整理して、力に変えていきたい」と渡辺はいう。

「好きなところは、多種多様なお店がたくさんあるので、欲しいと思ったときに欲しいものがすぐ手に入ること。嫌いなのは満員電車(笑)」という東京。
 まずは、その故郷での20年オリンピック出場という「欲しいもの」を手に入れよう。そして「すぐ手に入る」というわけにはいかないだろうが、MD、XD両種目のメダルを目指そうじゃないか。

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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