バルセロナ入り内定の“イニエスタ2世” ブラジル出身のアルトゥールとは?

沢田啓明

欧州ビッグクラブが獲得に動いたブラジル人

昨年のコパ・リベルタドーレスで大活躍して以降、欧州では大きな注目を集めていたアルトゥール(左) 【写真:ロイター/アフロ】

 近い将来、ブラジル出身の“イニエスタ2世”が“元祖”に取って代わるかもしれない。

 3月8日、グレミオ(ブラジル)の会長が「MFアルトゥール(21)の移籍でバルセロナと合意した」と明らかにした。その3日後、バルセロナはクラブのHPで「アルトゥールを今年7月に獲得する権利をグレミオから取得した。この権利を行使した場合、移籍金は3000万ユーロ(約39億4000万円)で、その後のプレー内容に応じて最大900万ユーロ(約11億8000万円)が追加される」と発表。つまり、移籍金は最多で3900万ユーロ(約51億2000万円)となる。

 スペイン、ブラジル両国のメディアは、「今年7月に契約しても、実際にバルセロナに加わるのは来年1月となる可能性もある」と報じている。外国人枠との兼ね合いもあるだろうが、今年5月で34歳となり、力の衰えが感じられつつある名手アンドレス・イニエスタの今後のプレー内容によるところが大きいようだ。

 アルトゥール・メロは、日本ではあまり知られていないかもしれないが、昨年のコパ・リベルタドーレスで大活躍して以降、欧州では大きな注目を集めていた右利きのボランチだ。バルセロナ以外にも、レアル・マドリー、パリ・サンジェルマン、モナコなどそうそうたるビッグクラブが獲得を目指してつばぜり合いを繰り広げていた。

プレースタイルはシャビ×イニエスタ

特長は驚異的なキープ力と展開能力。シャビとイニエスタをミックスしたような特長を持つ 【写真:ロイター/アフロ】

 最大の特長は驚異的なキープ力と展開能力で、それを可能にするのは高度なテクニックと優れた状況判断だ。小柄だが強靭(きょうじん)な身体をうまく使ってハードに守り、ボールを奪うと低い姿勢で確実にキープし、相手にとって最も危険なスペースを見つけ出して精度の高いパスを繰り出す。中盤で相手選手に囲まれてもほとんどボールを失わないし、パスの成功率が極めて高い。近年、バルセロナが生んだ2人の偉大なMFであるシャビ・エルナンデスとイニエスタをミックスしたような選手だ。

 ブラジル中部ゴイアニアの生まれ。4歳で親戚が運営するサッカースクールに入り、基本技術を教わった。7歳のとき地元の強豪クラブ、ゴイアスの下部組織に加入。ブラジルの子供の大半は少し前ならロナウドやロナウジーニョ、今ならネイマールに憧れるが、彼の場合はイニエスタ。プレー映像を繰り返し見て、ひたすらまねた。本人は、「僕がブラジル人としては控えめな性格なのも、イニエスタの影響かもしれない」と笑う。憧れのクラブは、もちろんバルセロナ。

 14歳のとき、ゴイアスでのプレーが南部の名門グレミオのスカウトの目に留まり、勧誘を受けた。ゴイアニアからグレミオが本拠を置く南部ポルトアレグレまでは2000キロ以上離れており、気候や人々の気質が大きく異なる(ゴイアニアが熱帯性気候で人々が開放的なのに対し、ポルトアレグレは温帯で住民はヨーロッパ系が多くやや閉鎖的)。母親は「まだ子供だから……」と心配したが、父親が「せっかく名門クラブの門が開かれたんだから、思い切って挑戦してみろ」と背中を押してくれた。

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著者プロフィール

1955年山口県生まれ。上智大学外国語学部仏語学科卒。3年間の会社勤めの後、サハラ砂漠の天然ガス・パイプライン敷設現場で仏語通訳に従事。その資金で1986年W杯メキシコ大会を現地観戦し、人生観が変わる。「日々、フットボールを呼吸し、咀嚼したい」と考え、同年末、ブラジル・サンパウロへ。フットボール・ジャーナリストとして日本の専門誌、新聞などへ寄稿。著書に「マラカナンの悲劇」(新潮社)、「情熱のブラジルサッカー」(平凡社新書)などがある。

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