ネイマールがバルサと結んだ密約の裏側=現実味を帯びる今夏での移籍
唐突なバルサへの移籍合意の報道
先日バルセロナとの民事契約がスクープされたネイマール 【写真:アフロ】
ネイマールのバルセロナ移籍にまつわる話はこれまでもいろいろ出てきた。それを、時系列で見てみよう。
さかのぼること11年9月、サンパウロ市のエスタード・デ・サンパウロ紙のルイス・モナコ記者が、サントスFCとネイマールとバルセロナの3者は13年7月に移籍することで内々に合意に達したとスクープした。
当時、バルセロナのフットボール部ディレクターのラウール・サンジェイが、ブラジルに来てネイマールとサントスに密会。ネイマールはバルセロナとの移籍話に「イエス」を言う寸前までいっていた。しかし、そこで待ったをかけたのが、ライバルのレアル・マドリーだった。この状況を手をこまねいて見ているわけにいかなかったレアル・マドリーは、バルセロナを上回るオファーを提示。その結果、ネイマールは契約書にサインすることなくバルセロナとの話をいったん白紙に戻した。
一方、レアル・マドリーはすぐさまチームドクターのカルロス・ディアスをブラジルに派遣し、ネイマールにドクターチェックを受けさせることにした。ネイマールとレアルとの契約成立は時間の問題と言われていたのだが、結局この話は流れ、変わって11月にサントスとネイマールは契約を14年ブラジルW杯終了までとし、違約金を4500万ユーロ(当時の金額で約52億円)にすると合意に達したのだった。もちろん、バルセロナやレアルとの交渉について、ネイマールもサントスも否定し続けていた。
バルサと結んだ民事契約の内容
12年5月、ネイマールはサントスと契約更改し、早期契約の際の違約金を6500万ユーロに大幅アップさせた。
そして、今回報道されたネイマールとバルセロナの民事契約についてだが、FIFAの規定上、選手は契約終了の6カ月以前はスポーツ仮契約を結べないことになっているため、民事というあくまでも私的な契約を結んだ。内容はネイマールがサントスとの契約終了後、バルセロナが移籍先として優先的になること。もし、両者のどちらかがこの契約を破った場合、相手に違約金として8000万ユーロ支払わなければならない。
この条件には3つのポイントがある。
(1)他クラブはもうネイマールに手を出すことができない。8000万ユーロを出すクラブがあるかどうか。かなり高いハードルとなっている。バルセロナにとってネイマール獲得競争の最大のライバルであったレアル・マドリーは、みすみすバルセロナに8000万ユーロを渡すなどということをソシオ(ファンクラブ)やサポーターが許すはずもないので、競争から消えた。
(2)ネイマールとサントスの契約終了(14年W杯終了)後、バルセロナに移籍する場合、バルセロナは違約金をサントスとその他の違約金を受け取る権利者に払わなくてもよい。その代わり、ネイマール本人と代理人に4000万ユーロを支払う。
(3)現在、ネイマールの移籍に関わる経済的権利、習慣的な言い方で保有権は、4者によって所有されている。正確に言えば、サントスが45パーセント、DIS社(08年投資目的で保有権の一部を約1億1000万円で買い取った)が40パーセント。5パーセントをTeisa社(同じく投資目的で10年に約1億7000万円支払った)、そして、10パーセントをネイマール(会社組織にしている)という内訳だ。ネイマール以外の3者は、移籍金ゼロになれば儲けは無しとなる。
そして、この(3)が1番の問題点だ。1月に私がインタビューした際に、ネイマールは、「移籍金ゼロでサントスを出ていくことはないよ。サントスがそうしたいなら、僕はいいけどね(笑)」と冗談めかして言っていたが、移籍金ゼロでネイマールは困らない。確かに、自らの保有権を10パーセント持っているため、契約期間中に移籍した場合、違約金の10パーセントはもらえる計算になる。それに、契約終了後ならバルセロナはネイマール自身に契約金を支払うため、ネイマールはより高額な金額を手にすることができる。
しかも、この密約により、バルセロナはネイマールに1000万ユーロをすでに支払っている。その証拠に、バルセロナの11/12シーズンの収支報告に1000万ドルが記載されているのだ。 バルセロナのネイマール獲得予算は4000万ユーロで、すでに支払った1000万ユーロの残りの3000万ユーロは、先ほども言ったがネイマール本人と代理人に支払われることになる。