今治に感じるJ3昇格への自信と重圧 上々の「船出」となったJFL開幕戦
「3.11」に開催された20年目のJFL
今季のJFLは3月11日に開幕。試合前、東日本大震災の犠牲者に向けて黙とうが行われた 【宇都宮徹壱】
黙とうの間、7年前のJFLのことを思い出す。この年の日本サッカー界は、日本代表とJリーグ選抜によるチャリティーマッチ、なでしこジャパンのワールドカップ優勝、そしてベガルタ仙台の躍進など、さまざまな出来事があった。あまり注目されることはなかったが、この年のJFLも震災の影響を少なからず受けている。開幕日は3月13日だったが、当然ながら中止。その後、第2節から第6節までの中止が段階的に発表され、結局4月23日の第7節が開幕節となった。そして中止となった6節分は、主に8月、11月、12月に振り替えられることとなり、後半戦は過密日程となった。
この年、最も深刻な影響を受けたのが、被災地のクラブであるソニー仙台FC。選手が働いていた社屋は津波被害に遭い、まさに「サッカーどころではない」状況が続いた。結局、前期リーグの17試合は参加を見送ることを決断。後期リーグ17試合と、延期分6試合(災害復興支援試合)のみを戦うという変則的な日程となった。すべてのチームが、同じ試合数を戦うのがリーグ戦の大前提。とりわけ上を目指すクラブにしてみれば、こうした変則的なリーグ運営は決して歓迎できないものであったはずだ。しかしJFLの実行委員会では、明確な反対意見はなかったと聞く。「困った時は助け合おう」という、いかにもJFLらしい話だなと思ったものだ。
あれから7年。JFLは14年のJ3開幕とともに改組され、今では4部リーグとして日本サッカーのピラミッドに組み込まれている。震災の危機を乗り越えて以降も、ここ数年は企業クラブの撤退が相次ぎ、そのたびに「アマチュアの全国リーグ」の存在意義が問われてきたが、こうして20年目のシーズンを迎えたことを素直に喜びたい。そしてJFL2年目を迎える今治にとっては、今季は「是が非でもJ3昇格」という勝負の年。新シーズンの開幕を待ちわびるかのように、この日の夢スタには4493人もの観客が集まった。
スタメンに4人の新加入選手を起用
今季こそのJ3昇格を目指すFC今治。開幕戦では4人の新加入選手がスタメン入り 【宇都宮徹壱】
J3に昇格するための成績面での条件は、ステージ優勝するか、年間総合で4位以内に入ること。昨シーズンの今治は、ステージ優勝はかなわず、年間順位も6位に終わっている。優勝したHonda FCには2戦していずれもドローだったが、年間で上位5チームに対して勝利できたのはアウェーのヴァンラーレ八戸戦のみ(1−0)。初めての全国リーグを戦うには、十分な力を持っていなかったと言わざるを得ないだろう。
今季の戦力補強は、昨シーズンと比べてやや地味な印象は拭えない。新加入選手10人のうち、元JリーガーはDFの太田康介(ツエーゲン金沢)のみ。残りはJFLプレーヤーか大卒選手ばかりである。補強の基準について、吉武監督は「われわれのメソッドにすぐ順応できること」を挙げている。そしてそのチョイスに関しては、高司裕也オプティマイゼーション事業部長の主導のもとで行われたようだ。その上で指揮官は、今季の強化方針についてこう語っている。
「これまでの3年間は、岡田メソッドの構築とトップチームの強化を並行してやってきましたが、すでに選手たちも理解しているので、今年はメソッドはやりません。その上で、今年はプレーモデルを作る年になります。どんなに選手が入れ替わっても目指すプレーモデルは変わらない。われわれは『2018バージョン』と呼んでいますけれど、それを3月までに落とし込んで、今季を乗り切らならないといけない」
こうした吉武監督の発言を踏まえて、注目したいのがこの日のスタメン。重要な開幕戦で、果たして何人の新戦力を使うのだろうか。この日の今治のシステムは4−2−3−1。11人のうち、4人が新加入選手であった。すなわち、センターバックの太田、守備的MFの山田貴文と瓜生昂勢、そしてセンターFWの有間潤。センターラインの重要なポジションに新戦力を配置したところに、指揮官の信頼と期待を見て取ることができる。この新布陣、果たしてどれだけ機能するのだろうか。