グループステージでPK戦も? パリ五輪へ、大岩ジャパンが迎える「日韓戦」という分水嶺

川端暁彦

日本の選手たちに韓国への苦手意識のようなものは存在しない 【写真は共同】

「少し不思議な感じの」日韓戦

 AFC U23アジアカップは、22日にグループステージ最終戦を迎える。パリ五輪への切符を懸けたこの大会、迎える相手はアジアの伝統的ライバル、韓国である。

 ここまで両者は2連勝。すでにグループステージ突破は確定させており、どちらが1位抜けになるかを決める試合という位置付けだ。1位突破なら相手はインドネシア、2位突破なら相手は開催国のカタールとなる。

 UAEとの第2戦終了後、FW藤尾翔太(町田)が「1位で突破するのと、2位で突破するのは全然違う。1位で突破できるように準備していきたい」と語ったように、選手側にも首位突破の重要性は意識されている。韓国を破って1位で準々決勝へ進む。その目的は明瞭だ。

「大岩ジャパン」にとっての直近の日韓戦は昨年秋のアジア競技大会決勝だが(1-2で敗戦)、このときは日本側の主力はバーレーンで開催されたAFC U23アジアカップ予選に出場し、日韓戦には不在だった。また、韓国はオーバーエイジ選手を含め、年齢制限ギリギリまで使ったフルメンバーでの参加で、今回の試合に向けて直接的に参考にできる要素は乏しい。

 2年前のAFC U23アジアカップでは準々決勝で対戦しており、日本側はDF半田陸(G大阪)、内野貴史(デュッセルドルフ)、MF藤田譲瑠チマ、山本理仁(ともにシントトロイデン)、松木玖生(FC東京)、FW細谷真大(柏)、藤尾翔太(町田)ら、このときのメンバーが多く残る。日本がU-21代表だったのに対し、韓国はU-23代表での参加だったが、結果は今回不参加のMF鈴木唯人(ブレンビー)の2得点などで3-0と日本の快勝に終わった。

 この結果もまた直接参考にできるものではないが、選手たちに韓国への苦手意識のようなものが存在しないことは確かで、「韓国だからといって気合いが入るとかはない」と藤田がサラッと言ってのけたように、特段の気負いもなさそうだ。

グループステージでPK戦?

トレーニングを行うU-23代表。PK練習は積み上げてきたが、90分で勝ち切ることを目指したい 【AFC】

 そしてこの試合、大岩剛監督が「少し不思議な感じ」と形容した特殊なルールが存在する。ここまでの2試合で日本と韓国は共に2勝、しかも得点数と失点数も完全に同じという状態で、数字上の差が存在しない状態にある。つまり、最終戦が引き分けだと、両国は同率首位になる形だ。

 W杯などはこの状態だとフェアプレーポイント(イエローカード、レッドカードの枚数をポイント化したもの)で順位を決めるのだが、アジアサッカー連盟の大会は、当該2チームがグループ最終節で直接対決になった場合に限り、その場で順位決定のためのPK戦を行うと決めている。

 つまり、日韓戦が引き分けになった場合、1位か2位かを決めるためだけのPK戦が実施されるのだ。

 内野貴が「確かにちょっと変わっている、あんまり経験したことがないレギュレーション」と言ったように、選手たちにとっても未知の経験である。PK戦の練習自体はチームとして継続して取り組んできており、その成果が問われる可能性はある。

 ただ、DF鈴木海音(磐田)は「PKに行くまでに90分で試合を決めないといけない」と強調する。

「今日もPKの練習はしましたけど、準々決勝、準決勝、決勝でもPKはあると思うので、90分で勝ち切りたいと思います」(鈴木)

 グループステージの段階でPK戦を行うことになり、そのデータをこれからの対戦国に与えてしまうのは明らかにネガティブな状況。まず、90分で勝ち切ることを目指すのは大前提というわけだ。

「攻守で充実している」と大岩監督が語り、「前の2試合よりさらにレベルが上がった完成度のあるチーム」と松木が評する韓国は今大会屈指の強豪。ノックアウトステージを勝ち上がれば再戦の可能性も十分にあり、ここで叩いて心理面でも優位を占めておきたい相手である。

 かつてのイメージと異なり、現在の韓国は「日本と似たようなビルドアップをしてくる」(松木)チーム。ただ、日本相手にはロングボール攻撃を増やすことも考えられ、ここまで3得点と好調の長身FWイ・ヨンジュンをシンプルに使う攻めは、やはり最も警戒すべきポイントと言えそうだ。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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