日本の誤算、韓国の妙手 「絶対に負けられない」…わけでもなかった日韓戦の機微と「後々」への布石
試合内容では上回った面もある日本だが、決め切ったのは韓国だった 【写真は共同】
日韓それぞれの選手刷新
あとは22日の日韓戦を残すのみ。この結果による違いは1位で抜けるか、2位で抜けるか。あるいは「日韓戦」という舞台にどこまでプライオリティを見いだすかだが、両国の結論は似通っていた。
スターティングオーダーに日本の大岩剛監督、韓国の黄善洪(ファン・ソンホン)監督の意図は明確に表れている。日本は前節から7名、韓国は前節から10名を刷新してきた。「6試合を戦うためのマネジメント」を強調してきた日本の指揮官は、「事前のプラン通り」にこの日も大幅にメンバーを入れ替え、ノックアウトステージに向けての温存を優先させた。
基本的に中2日の連戦になる今大会、「同じメンバーで現代サッカーの強度を維持し続けるのは無理がある」というのが大岩監督の当初からの見解だ。もちろん、ここで負ければ敗退となるシチュエーションであれば、多少の無理をするほかなかったが、2連勝でこの試合を迎えたことにより、「プラン通り」の起用が可能になっていた。
結果的に日本の先発にはGK野澤大志ブランドン(FC東京)、DF半田陸(G大阪)、MF田中聡(湘南)と今大会の出場機会がなかった3名、初先発となるFW内野航太郎(筑波大学)といった選手たちが並んだ。
対する韓国も先発の約半数に当たる5名が初出場。お互いに負けたら終わりの一発勝負となる準々決勝以降を見据えた戦力の温存を図りつつ、ここまで出場機会のなかった選手にここで出番を与えることで、ノックアウトステージの戦いに向けて彼らを戦力化する。そんな狙いを持っていることは明らかだった。
試合を分けた戦術的な対応力不足
フレッシュな日本の先発オーダーは思わぬ機能不全に陥った 【AFC】
「誰が出ても同じようにプレーできる」ことをコンセプトとして掲げる日本は、「明確なプレーモデルとプレー原則」(大岩監督)に基づく戦術を持つ。この日もこれまでのメンバーと同じフォーメーション、同じ戦術的なベースを持って試合に入った。
一方、韓国は事情が違った。出場停止と負傷でセンターバックを本職とする選手が足りなくなってしまっていた背景もあり、黄監督は大幅な戦術変更を決断。5-4-1の配置で後方に人員を割く、守備的な布陣でこの日本戦へ入ってきた。
「あそこまで引いてくるのは想定していた以上のものがあった」と大岩監督が形容したように、これは日本の事前のスカウティングを完全に外したもの。「5バックは想定していなかった」と初先発のFW内野航も振り返る。アグレッシブに試合へ入るはずが、思わぬ相手の陣形を前に、様子見から試合に入るような形になってしまった。
「前半、前への選択肢を持つとか、もう少し全員がシュートにいく、チャレンジする姿勢を見せていかなければいけなかった。消極的なプレーが増えてしまっていた」
DF鈴木海音(磐田)がそう振り返ったように、攻撃的なチャレンジがチームとしても個人としても乏しく、チャンスらしいチャンスをほとんど作り出せないまま、無為な45分を過ごしてしまった。
守備でも相手のビルドアップが日本では余り採用されていない、3センターバックの中央の選手を前に押し出す形だったこともあり、ボールを奪いにいくやり方でも混乱が生まれた。「『誰が行くんだ?』となってしまっていた。守備でも、もっとコミュニケーションを取って共通理解を持つべきだった」と後悔を語ったのは内野航。結果的にこの停滞は致命的だった。
試合を振り返ったとき、敗因としてフォーカスされるのは後半の失点やチャンスを逃した場面になりそうだが、もう一つの大きな敗因は、何も起きなかった、起こせなかった前半の45分にこそあった。
事前のスカウティングの通りにいかない、つまり日本対策を含めて相手が普段と異なる戦術を採用してくるというのは国際大会の真剣勝負ではよくあることである。そこに対応するのもチームとしての能力だが、その意味で戦術的な対応力不足は指摘されて然るべきだろう。