錦織圭、けがから復帰後の心境を語る 2018年は「毎週がチャレンジ」

杉浦大介

ずっと海外にいた分、愛国心は強い

ニューヨーク・オープンに臨む錦織は、「ニューヨークはすごく好き」と語る 【写真は共同】

――当時のニューヨークでは日本人コミュニティーが錦織選手の活躍を誇りに感じ、かなり盛り上がったのを記憶しています。多くのアスリートは「国を代表している」「後の世代につなぎたい」といった思いを語り、母国のファンを喜ばせることを誇りに思うものです。錦織選手も同じですか?

 僕はずっと海外に、米国にいたので、その分、愛国心は他の人より強いかもしれないですね。海外で戦うときに、日本人というのを意識することはあります。他国の人と接する過程で日本人だというのを意識せざるを得なかったですし。特にグランドスラムだったり、大きな大会だと、日本人のお客さんのサポートを感じることは多いです。日本人として戦っているんだなという思いは自分の力になっていると思います。

――私もかなり長く米国に住んでいますが、離れた場所にいることによって、母国の良さが余計に見えてくるというのは確かにありますね。せっかくだからニューヨークのことをもう少し話していただきたいのですが、この街自体の印象は?

 ニューヨークは好きですね。ただ、ダウンタウンの方の話ですけれど。今回の会場は初めて来たのですが、街からはかなり離れていますね(笑)。

――ニューヨーク・オープンの会場になるナッソー・コロシアムはロングアイランドにあり、マンハッタンと違って周囲は閑散としていますからね。一般的に連想されるニューヨークとは雰囲気が違うと思います(笑)。

 全米オープンのときはマンハッタンのダウンタウンに滞在します。いろいろなレストランがあったり、買い物できるところも充実しているので、ストレスを発散できる場所がたくさんありますね。ニューヨークはすごく好きです。日本食もありますし、日本人にも優しいというか、ホームシックにならずに済む場所。日本人がたくさんいて、試合にも多くの方が来てくれる。そういう意味で過ごしやすい街です。

ブランク中に気付いた課題・伸びしろ

――今回のトーナメントにも多くの日本人ファンが来てくれると思います。今大会、そして今後のプレーに関しても話してください。ラケットを握れなかったブランク中にあらためて気付き、今後に生かせそうなことは?

 新たに身体を見直すきっかけになりました。普段のツアー中は、これほど身体に向き合う時間を持つことは難しいもの。今回はいろいろなところを治したり、伸ばさないといけないところを見つけられたし、さまざまなトレーニングもこなせました。今の段階では実戦をこなさなければいけないので、今後は試合数をどれだけこなせるかが焦点になります。ここに至るまでに時間があったおかげで、プラスの面はあったと思います。

――「故障後、元の場所に戻れるかどうかがこれから証明される」といった話をよく聞きます。以前の地点に戻るだけでなく、そのさらに上を目指すだけの伸びしろが自身に残っていると感じていますか?

 あると思います。まずは前の自分に戻るのが最低限の目標ですけれど、やはりそれ以上をやっていかないと前のランキング以上にはなれないと思うので、もっともっと強い自分を目指していきたいです。精神的にも強くならないといけない。テニスの技術面でも、ここが伸びればもっと試合に勝てるようになるというのがいくつかあるので、しっかりとやっていけるようにしたいです。

――以前のインタビューをいくつか読ませていただいて、14年の時点で「まだテニスを楽しめている」というコメントを残されていました。それは変わりませんか?

 変わらないですね。これだけ休んでも、ほとんど変わらない。(テニスは)ある意味でチャレンジなので、(目標を)なるべく達成できるように頑張りますけれど、達成できなくても、これが自分の選んだ道です。楽しんでやらないといけません。

――好きな仕事でも、長年、繰り返しやっていると思いは変わってきます。依然として楽しめるということは、やはりテニスが心の底から好きだということでしょうか?

 それは根本的に深くあるんじゃないですかね。もちろんつらいときもあるし、やりたくないこともあります。ただ、ちょっと休めばリフレッシュできます。

トップ10には早く戻りたい

今年は「毎週がチャレンジ」という錦織。「トップ10には早く戻りたい」と目標を語った 【Getty Images】

――それほど好きなテニスが一時的にできなくなり、ラケットが握れない期間はどう過ごされていたんですか?

 いろいろなことをやっていました。リハビリは毎日、朝から夜までずっとやっていたので、オフの日はしっかりと気分転換をするようにとトレーナーさんにも言われていました。ベルギーでリハビリをやっていたのですが、買い物をしたり、街に出たり、今まで行ったことのない場所に行ってみたりしてました。

――現時点での選手としての目標は?

 今年に関しては毎週がチャレンジになります。いつ100%の状態に戻れるかも分からないので、なるべく良い結果は残したいですけれど、できる限りの努力をして、それで結果がついて来れば良いし、ついてこなくても翌週頑張れば良いだけのこと。ランキング的にはトップ10には早く戻りたいですね。それがまずは1つの目標です。

2/2ページ

著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント