プレミアや中国に資金力で劣るラ・リーガ 移籍市場で見えた「質素倹約」の方向性

効果的な補強を行ったセビージャとビジャレアル

チェルシーから戻ってきたジエゴ・コスタ。経営規模を拡大し続けるアトレティコ・マドリーは、補強に大金を費やした 【Getty Images】

 経営規模を拡大し続けているアトレティコ・マドリーも、補強に大金を費やしたクラブといえるだろう。数年ぶりにチェルシーから戻ってきたジエゴ・コスタとビトロの獲得にかかった費用は合計9250万ユーロ(約123億円)。一方で今冬に放出したルシアーノ・ビエット、アウグスト・フェルナンデス、ジエゴ・ジョタらはみな、ディエゴ・シメオネ監督に戦力外とみなされた選手たちだった。

 少ない支出で効果的な補強を行ったのは、現在ヨーロッパリーグ圏内につけているセビージャとビジャレアルだ。エドゥアルド・ベリッソからビンチェンツォ・モンテッラに監督が代わったセビージャは、ブラジル人左サイドバック(SB)のギリェルメ・アラーナに1100万ユーロ(約15億円)を費やしたが、ボランチのロケ・メサ(スウォンジー)、ストライカーのサンドロ・ラミレス(エバートン)、右SBのミゲル・ラユン(ポルト)といった即戦力をいずれもレンタルで獲得している。

 ビジャレアルは違約金4000万ユーロ(約53億円)を置き土産に得点源のセドリック・バカンブが北京国安へ移籍した後、同じ中国リーグからアルゼンチン人ストライカーのロヘル・マルティネスを1500万ユーロ(約20億円)で獲得。エスパニョールからはボランチのハビ・フエゴが75万ユーロ(約1億円)の移籍金で加入している。

 他ではマルク・バルトラ(ドルトムント→ベティス)、カルロス・サンチェス(フィオレンティーナ→エスパニョール)、ビエット(アトレティコ・マドリー→バレンシア)、フランシス・コクラン(アーセナル→バレンシア)らが主な新戦力となる。レアル・ソシエダはイニゴ・マルティネスの代役としてローマのエクトル・モレノを600万ユーロ(約8億円)で獲得したが、米国・メジャーリーグサッカー(MLS)のロサンゼルスFCに移籍したカルロス・ベラの穴埋め補強はできていない。

レンタル契約の活用や安価な選手の獲得が目立つ

レバンテに加入したパッツィーニは、レアル・マドリーとのスペインデビュー戦で同点ゴールを決めた 【Getty Images】

 下位のクラブではデポルティーボがセビージャからミカエル・クローンデリを獲得した一方、ルーマニア代表GKのコステル・パンティリモンがノッティンガム・フォレストに移籍した。同じく降格圏に沈んでいるラス・パルマスは、新監督に迎えたパコ・へメスの意向でアルゼンチン人ボランチのガブリエル・ペニャルバ(クルス・アスル)、ウルグアイ人SBのマティアス・アギーレガライ(ティフアナ)をメキシコリーグから連れてきた。レバンテはコケ(シャルケ)、ジャンパオロ・パッツィーニ(ベローナ)らを獲得。後者は他でもないレアル・マドリーとのデビュー戦で、途中出場した直後に同点ゴールを決める快挙を実現している。

 それ以外のクラブが冬の補強に費やした金額はほんのわずかだ。そのほとんどが移籍金のかからないレンタル契約を活用したものか、南米から連れてきたヨーロッパより安価な選手ばかりである。

 バルセロナとレアル・マドリーを除き、現状スペインのクラブがプレミアリーグや中国、MLSなどのクラブと資金力で争うのは難しい。結果として新戦力の発掘先は南米、もしくは経営難のクラブが多いイタリアなどに偏ってしまうのも、仕方のないことなのだ。

※移籍金は推定で、日本円は18年2月10日現在のレートで換算

(翻訳:工藤拓)

2/2ページ

著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント