バルセロナが築いた早すぎる独走態勢 厄介な障害はピッチ外の混乱だけ?

予想できなかったバルセロナの独走

レアル・マドリーのつまずきもあり、第6節にして早くもバルセロナは独走態勢に 【写真:ロイター/アフロ】

 レアル・マドリーのチャンピオンズリーグ2連覇、ネイマールのパリ・サンジェルマン移籍、選手補強の失敗、目玉補強だったウスマン・デンベレの長期離脱、進まぬアンドレス・イニエスタとの契約交渉――。ひと夏の間にこれだけの問題を抱え込んだバルセロナが、まさかラ・リーガで早々に首位の座を固めることなど、誰が予想できただろうか。

 まだ6試合しか消化していないにもかかわらず、早くもバルセロナは勝ち点18で2位のアトレティコ・マドリーに勝ち点4差、宿敵レアル・マドリーには同7差をつけている。

 バルセロナがいち早く独走態勢を築いた大きな要因の1つはレアル・マドリーのつまずきだ。“ロス・ブランコス”はサンティアゴ・ベルナベウでバレンシア、レバンテと引き分けた後、ベティスをホームに迎えた一戦でもバルセロナの下部組織出身のトニー・サナブリアに終了間際に決勝点を決められ、予期せぬ今季初黒星を喫した。

 その傍らで、バルセロナが試合を重ねるごとに強さを増していることも確かだ。新監督のエルネスト・バルベルデは変にメンバーやシステムをいじることなく、理にかなったチーム運営でベストのパフォーマンスを引き出そうと試みている。デンベレが2018年までプレーできなくなったこともあるが、新加入の選手たちに少しずつ出番を与えながらチームに組み込んでいる。

 リオネル・メッシは第6節終了時点で9ゴールを量産するなど、シーズン序盤から突出した活躍を見せている。イニエスタはフィジカルコンディションが向上。セルヒオ・ブスケツも好調で、守備も安定している。これらの要因が快進撃を支えている現状、10月1日にカンプ・ノウにラス・パルマスを迎える第7節も、引き続き勝ち点3を積み重ねることが期待されている。

パウリーニョは即戦力として活躍

パウリーニョはここまで即戦力として活躍している 【写真:ロイター/アフロ】

 結果を出し続けていることで、バルベルデは異なる選手をローテーション起用する余裕が出てきた。早い時間に点差を広げてしまえば、残る時間を使って新たな戦術オプションを試すこともできる。セルジ・ロベルトは本職のインサイドハーフと右サイドバックで併用され、リュカ・ディーニュにも出番が回ってきた。中でもパウリーニョは与えられたチャンスを最大限に生かし、早くもリーグ戦で2ゴールを決めている。

 パウリーニョは特殊な例だ。バルセロナは中国リーグでプレーする彼の獲得を決める際、ブラジルフットボール連盟(CBF)に助言を求めたのだが、CBFはトッテナムで活躍できなかったブラジル代表MFがバルセロナのプレースタイルに適応できるかどうか懐疑的だったという。彼の特徴はバルセロナの志向するきめ細かなパスワークや連係プレーにはなく、フィジカルコンタクトや2列目から前線に飛び出すプレーにあるからだ。

 しかし、パウリーニョはここまで即戦力として活躍している。それもバルセロナ伝統のプレースタイルに合わせるのではなく、自身のプレースタイルを保ちながらその特徴を生かしている。ジェラール・デウロフェウは対照的に、デンベレの長期離脱で増えたはずのチャンスを生かすことができていない。浮き沈みが激しい彼のパフォーマンスは、今のところ昨季ミランで見せていたプレーレベルに達しているとは言い難い。

 今のバルセロナは中途半端なチームだ。数年前のように見る者を魅了するようなチームでもなければ、前線の南米トリオを生かした昨季までの圧倒的な攻撃力にも近づけていない。ネイマールの代役は見つからず、ルイス・スアレスも昨季までの得点力を取り戻すことができていないからだ。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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