札幌といわきが参戦する“国際大会”とは? パシフィック・リムの仕掛け人が語る物語
特定のスター選手に依存せずに「プロパティを育てていく」
いわきFCのメーンスポンサーである株式会社ドームがスポンサーとして大会をサポートしている 【写真は共同】
では、札幌の出場はどのようにして決まったのか。昨年11月に大会の開催が決まったとき、すでに多くのJクラブはオフのキャンプ日程が決まっていた。そんな中、手を挙げたのが札幌。中村いわく「野々村(芳和)社長が、面白いことにチャレンジする人だったので共感していただきました。それと、北海道とハワイ州が姉妹提携を結んだことも追い風になりました」とのこと。ドームの安田社長と札幌の野々村社長。ふたりのユニークな経営者の理解を得られたことで、プロジェクトは大きく前進していくことになる。
パシフィック・リムカップに出場するバンクーバー・ホワイトキャップス 【(C)Vancouver Whitecaps FC】
「僕は1回きりの成功ではなく、今後も続いていく大会にしたいんです。今年成功したら、19年はMLSとJリーグが提携するシンボルとなるような大会にしたい。そして20年には、メキシコや韓国やタイのクラブにも声を掛けて、本当の意味での『環太平洋の大会』にしていきたいんです。続けていくことで大会の認知度は高まるし、入場数やスポンサーも増えていく。ですから、最低でも3年間は続けていくのが前提ですね」
思えば10年前のパンパシは、育てようと思った矢先によそに買われて、そのまま休止の憂き目に遭ってしまった。スポーツビジネスが盛んな米国だが、一方で「プロパティを育てていくことへの関心が薄い」と中村は指摘する。今回のパシフィック・リム開催は、中村自身の10年越しの悲願であると同時に、「プロパティを育てていく」文化を根付かせるチャレンジがあり、その向こう側には日米を巻き込んだ環太平洋サッカーの発展という壮大な夢がある。その第一歩を見届けるべく、私も間もなくハワイに飛び立つことにしたい。
<文中敬称略>