- 中田徹
- 2018年1月28日(日) 18:30
2ゴール1アシストと3試合連続で“結果”を残す

今年に入り堂安律(フローニンゲン)が幸先の良いスタートを切っている。第19節のヴィレムII戦(1−1)では左足で強烈なミドルシュートを決め、『アルヘメーン・ダッハブラット』紙の週間ベストイレブンに選出された。続く、現地時間1月27日のヘラクレス・アルメロ戦(3−3)では、45分にアシストを記録した。
これで堂安は、1ゴールを決めた年末のスパルタ・ロッテルダム戦(4−0)も含めると、3試合連続で“結果”を残したことになる。
ヘラクレス戦のアシストは、堂安が敵陣でMFヤミロ・モンテイロのボールを奪って相手のビルドアップをつぶし、敵のアプローチをしっかりブロックして前に振り向いてからスルーパスを通したものだった。アシストシーンには、前半で堂安が見せた3つの良さが凝縮されていた。
1)ファーストディフェンス
2)ボディーコンタクト
3)スルーパス
堂安は、相手とのボディーコンタクトをいとわず、むしろ楽しんでいるようにさえ見える。チームが優勢だった前半は、ファーストディフェンダーとしても機能し、積極的にプレスをかけていた。左サイドハーフの堂安は、MFリュドビート・ライス、左サイドバックのジャンゴ・ワーマーダンと連係し、相手をライン際に追い込みながら、飽くなき1対1の戦いに挑んでいた。アシスト時のボール奪取のシーンを振り返り、堂安はこう語る。
「チームメートがヘルプに来てくれていたので、自分は抜かれてもいいぐらいの気持ちで強くいったのが良かったです」
ヘラクレス戦で浴びた強烈なブーイング

堂安の魅力は何よりも攻撃のセンス。「最近はボールを奪ったらバックスパスするのを止めようと意識していた」という堂安は、マーカーをはがして前を向くや否や、縦にスルーパスを出した。
「ノールックみたいな形でしたけれど、すぐにスルーパスで(ミモウン・)マヒに出した。あそこに出せば1対1で勝てると思いました」
この前半終了間際のマヒのゴールで、フローニンゲンは3−1とヘラクレスに点差を付けた。ホームのフローニンゲンは大きな拍手を浴びながら更衣室へ引き上げていったのだ。しかし、後半はヘラクレスの猛反撃に遭い2点を奪われ、結局3−3の引き分けに終わった。タイムアップの笛がなると、強烈なブーイングが選手たちに浴びせられた。
「デビュー」が話題にならないオランダの文化
もちろん、プロだから結果は大事。それでも、後半の苦い味は何人かの選手にとって大きな財産になったはずだ。
フローニンゲンのセントラルMF(日本で言うボランチ)はライス(17)とトム・ファン・デ・ローイ(18)と若い2人が前節からコンビを組んでいる。ライスのカバーに回ることも多かった堂安(19)は、「俺ら3人で(試合を)落ち着かせようぜ」と声を掛けていたという。
操縦桿を失ったボランチに、19歳の日本人が声をかけチームを引っ張ろうとイニシアチブを握った。結局、試合のリズムは取り戻せずチームは勝ち点を失い、堂安も後半37分でベンチに下がったが、それでも、この3人は失ったものより得たものの方が遥かに大きかっただろう。
「僕はけっこう対戦相手の年齢を見るんですけど、フローニンゲンのメンバーより若い選手が出ていることはないから、『スゲエなあ』と思います。日本だったら話題になるけれど、こっちでは当たり前のように試合に出ている。(デビューすれば)『おめでとう』と言うのはありますけれど、何か過ぎていく感じで。(デビューが)そんなにすごいことではないように見受けられているから、サッカー文化がすごいなと感じます」
確かに、ファン・デ・ローイが前節のウィーレム2戦で先発に抜てきされた時は、対戦相手の監督が父だったということもあって、オランダでも大きな話題になった。しかし、前半戦途中からレギュラーの座をつかんでいるライスはまだ、それほど話題にはなっていない。
「(ライスは)全然、騒がれていないですよね。『アヤックスが見ている』という記事が出ていました。俺が聞いたら『知らない』と言っていましたけど」