18年はスペインサッカー界の鍵を握る年に 真価問われる代表、課題が山積みのリーガ
欧州予選の戦いぶりはパーフェクトだったが……
モラタ(右から2番目)など若手の台頭により、スペインは欧州予選をほぼパーフェクトな内容で突破した 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】
当時、メノッティがアラゴネスに伝えたかったこと――。それは、“ラ・フリア・ロハ(激情の赤)”と呼ばれていた当時の代表は、目をつぶって全力でボールに突進するようなフットボールを捨て、フィジカルを問わずテクニックに優れた選手たちをそろえ、プレー精度が高く美しいスタイルを確立するべきだというメッセージだった。
結果はご存知の通り。08年から12年にかけて、スペインはユーロ(欧州選手権)2回とW杯を制しただけでなく、いまや世界中に認知されているプレースタイルを確立した。その後チームの中核を担っていた世代がピークを過ぎたことで一時の衰退期を迎えたが、16年にビセンテ・デル・ボスケ前監督の後を継いだフレン・ロペテギの指揮下ではイスコ、サウール・ニゲス、マルコ・アセンシオ、コケ、ダニエル・カルバハル、アルバロ・モラタら若い世代が加わったことで、再び息を吹き返した。
スペインの復活は、ほぼパーフェクトな結果を出したW杯ロシア大会欧州予選の戦いぶりに見てとれる。だがロペテギの世代交代がしかるべき結果を得られるかどうか、本当の試験は6月の本大会だろう。
ラ・リーガの改革を進めるテバス会長
クラシコはアジア市場を意識して13時にキックオフ。テバス会長はさまざまな改革を進めている 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】
ラ・リーガは先日、世界で最も重要な一戦の1つであるレアル・マドリーとバルセロナの“エル・クラシコ”を、アジア地域のファンを重視して現地時間13時キックオフで開催した。これはスペインフットボール界の文化的変化を象徴する出来事だ。会長のハビエル・テバスはファンをいち消費者ととらえるかのように、何千キロも離れた地域でテレビ観戦するファンも国内の地元ファンも、スペインフットボール界にとっては同様に重要であると主張するようになっている。
それだけではない。テバスは試合のテレビ放映中にバックスタンドが映った際、少なくとも70パーセントの座席が埋まっていることを各クラブに義務付けた(すでに今季、セルタ・デ・ビーゴがこの条件を満たせず、罰金を課せられている)。それは真実であるかどうかを問わず、スペインのフットボールが地元民にとって魅力的なエンターテインメントであるというイメージを発信するための方策の1つだ。
18−19シーズンに向け、テバスは日程の組み方も変えようとしている。これまでは前半戦と後半戦で対戦カードの順番が同じだったが、彼は前半戦が終わった時点で後半戦の日程をあらためて組み直すことにより、今まで以上に先の見えない魅力的なコンペティションにできるのではないかと考えているようだ。
テバスが強引に改革を押し進めていることは否定できない。彼は長年スペインフットボール協会(RFEF)を牛耳ってきたアンヘル・マリア・ビジャールと何年も前から対立しており、昨年末にはとうとう29年も独占してきた会長の座から引きずり下ろすことに成功した。そのためにはスペイン政府のサポートを受け、ビジャールを刑務所に入れることも厭(いと)わなかった。