“世代最強FW”安藤瑞季とはどんな選手か 埋もれた逸材の「日本人らしくない」個性
C大阪に内定した“世代最強FW”
今夏のインターハイでのワンシーン。安藤は相手GKをボールごとジャンプしてかわしてゴールを決めた 【川端暁彦】
まず写真を見てほしい。一発で彼の非凡さが分かるのではないだろうか。今年夏の全国高校総体(インターハイ)で、相手GKをボールごとジャンプしてかわしてゴールを決めたシーンである。『キャプテン翼』では頻繁に見られるシーンだが、普通にサッカーを見ていてお目に掛かる場面はそう多くないだろう。ドリブルした状態からとっさの跳躍にもかかわらず、まったくブレない空中姿勢が印象的だ。着地からシュートまでバランスを崩すことなくやってのけている。ありがちな日本人らしさ――つまり、ゴール前でカチコチになってしまうようなところがなく、絶対的な“運動性能”の高さを発揮できる。それは1つの個性だ。
もっとも、そうした個性を持ちながらも、安藤は“埋もれた逸材”だった。中学時代までを過ごした大分県時代にはタレントとして評価されておらず、年代別日本代表はもちろん、県の選抜でも「候補で落ちたり、そもそも入らなかったり」(安藤)という状態だった。本人にとってトレセンでの扱いなどは屈辱的な記憶として残っており、いまでも大分県勢と対戦するときや、大分県へ遠征して試合をするときには「やっぱり燃えますよ」と笑って言う。「見返してやりたい」という気持ちを強く持った中学生の安藤の意識は、自然と県外にいる「憧れの選手」の背中へと向くこととなった。
「憧れの選手」だった兄の存在
兄を追うように進路を長崎へと定めた安藤。兄と「比べられる」のも、決して嫌なことばかりではなかった 【川端暁彦】
「兄ちゃんは『柔』という感じですね。柔らかいプレーがすごい。自分は『剛』だと思います。体の強さ、フィジカルでゴリゴリいくプレーが好き。気持ちでは負けていないと思います」(安藤)
兄から渡された体幹トレーニングのメニューを愚直にこなすなど、安藤は成長に対してひたむきで、その姿勢自体が高校で指導することになった小嶺忠敏監督の目に留まることとなる。1年生のときは肝心なときに負傷してレギュラーをつかみ損なったものの、3年生が引退して臨んだ最初のトーナメントである新人大会で大活躍。2016年2月の九州大会では得点王に輝く働きを見せて、関係者の間で知られる存在となっていった。