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“世代最強FW”安藤瑞季とはどんな選手か
埋もれた逸材の「日本人らしくない」個性

C大阪に内定した“世代最強FW”

今夏のインターハイでのワンシーン。安藤は相手GKをボールごとジャンプしてかわしてゴールを決めた
今夏のインターハイでのワンシーン。安藤は相手GKをボールごとジャンプしてかわしてゴールを決めた【川端暁彦】

 日本サッカー界で「日本人らしさ」が追求されるようになって久しいが、そもそもの定義からして認識はバラバラである。器用さを生かしたテクニック、集団として自然に団結できる力、あるいは持久性の高さにそれを求める声もある。一方で「いまの日本人らしくない“日本人らしさ”を持っている」と評される選手もいる。第96回全国高校サッカー選手権に出場するセレッソ大阪内定の“世代最強FW”安藤瑞季(長崎総合科学大学附属高校)である。


 まず写真を見てほしい。一発で彼の非凡さが分かるのではないだろうか。今年夏の全国高校総体(インターハイ)で、相手GKをボールごとジャンプしてかわしてゴールを決めたシーンである。『キャプテン翼』では頻繁に見られるシーンだが、普通にサッカーを見ていてお目に掛かる場面はそう多くないだろう。ドリブルした状態からとっさの跳躍にもかかわらず、まったくブレない空中姿勢が印象的だ。着地からシュートまでバランスを崩すことなくやってのけている。ありがちな日本人らしさ――つまり、ゴール前でカチコチになってしまうようなところがなく、絶対的な“運動性能”の高さを発揮できる。それは1つの個性だ。


 もっとも、そうした個性を持ちながらも、安藤は“埋もれた逸材”だった。中学時代までを過ごした大分県時代にはタレントとして評価されておらず、年代別日本代表はもちろん、県の選抜でも「候補で落ちたり、そもそも入らなかったり」(安藤)という状態だった。本人にとってトレセンでの扱いなどは屈辱的な記憶として残っており、いまでも大分県勢と対戦するときや、大分県へ遠征して試合をするときには「やっぱり燃えますよ」と笑って言う。「見返してやりたい」という気持ちを強く持った中学生の安藤の意識は、自然と県外にいる「憧れの選手」の背中へと向くこととなった。

「憧れの選手」だった兄の存在

兄を追うように進路を長崎へと定めた安藤。兄と「比べられる」のも、決して嫌なことばかりではなかった
兄を追うように進路を長崎へと定めた安藤。兄と「比べられる」のも、決して嫌なことばかりではなかった【川端暁彦】

 視線の先にいたのは長崎総科大附の10番を背負い、まさにエースとしての活躍を見せていた実兄の安藤翼である。弟と違って中学時代から年代別日本代表にも名を連ね、そのテクニックで知られた存在だった。現在も強豪の駒澤大学で活躍を続けている兄を追うように、進路を長崎へと定めた。偉大な兄と「比べられる」のも、決して嫌なことばかりではなかった。「いつか越えてやりたい」。初めて話を聞いた1年生のとき、安藤はそんな言葉を残している。


「兄ちゃんは『柔』という感じですね。柔らかいプレーがすごい。自分は『剛』だと思います。体の強さ、フィジカルでゴリゴリいくプレーが好き。気持ちでは負けていないと思います」(安藤)


 兄から渡された体幹トレーニングのメニューを愚直にこなすなど、安藤は成長に対してひたむきで、その姿勢自体が高校で指導することになった小嶺忠敏監督の目に留まることとなる。1年生のときは肝心なときに負傷してレギュラーをつかみ損なったものの、3年生が引退して臨んだ最初のトーナメントである新人大会で大活躍。2016年2月の九州大会では得点王に輝く働きを見せて、関係者の間で知られる存在となっていった。

川端暁彦
川端暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカー批評』『サッカーマガジンZONE』『月刊ローソンチケット』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。2014年3月に『Jの新人』(東邦出版)を刊行

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